Temptation Invitation

片喰 一歌

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第1幕『半人半蛇(蛇人間)』【裏】

第14話『乞われて変わって蛇蛇蛇蛇(ジャジャジャジャ)~ン!(前編)』

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「…………グミちゃん。それは注文オーダーだと思っていい?」

 あたしの腕が振り払われることもなかったが、白夜は抱き締め返してはくれない。声の振動だけが伝わってきた。

「うん♡♡ 『していい』じゃなくて『してほしい』♡ あとは白夜が『うん』って言ってくれるだけ――なんだけど……♡♡ ごめん、その前にちょっとだけ確認しときたいことがあるんだけど……」

「何?」

「ここって、触れ込み的には『』なわけでしょ? 白夜はサーカスの演者さんっぽいことしないのかなぁ……って気になって♡♡」

 ――――『演し物っぽいことも出来なくはない』。白夜は確かにそう言っていた。

 あのときは軽く流してしまったが、芸人感皆無な彼が万が一のときのために用意している演目とは、一体なんなのか――。今になって気になり出したというわけだ。

「そういえば、説明したんだっけ。演者っぽいこと――っていうと、この体質…………でいいのかな? ――を活かした奇術。それと関係なくても何か絶技って言えるような――そういうものを持ってないかってことをグミちゃんは訊きたいんだね?」

「そう! 団長さんも魔法使いみたいだし、魔法の補助があったら色んなこと出来そうじゃん? 不可能も可能になるっていうか。だから、本当は大人向けのサービスなんてなくてもやっていけるような、すっごいショーが観れるのかもって思ったんだけど、違ったらスルーして?」

「…………さすがだね。グミちゃん。確かにその通りだ。団長さんにかけてもらった魔法のおかげで、僕は姿ようになった」

 声の調子にこそ変化はないが、少しだけまばたきが増えた。あたしの推測が正しければ、半分が蛇ちゃんの彼は――――。
 
「それって、もしかして……♡♡」

「うん。僕はグミちゃんの大好きな蛇の姿にもなれる。身体の一部だけを蛇にすることも出来るけど、そっちはあんまりおすすめ出来ないかな。見た目がちょっと……その、気味悪いと思うし…………」

「どんな蛇ちゃんも可愛いし、気味悪いなんて思わない♡♡ けど、全身変えられるんなら、断然そっち見たいな♡♡」

 白夜を見上げた視界の片隅に、非人道的な柵が映った。

 きっとこれも、蛇に変化へんげした彼が悪さをするおそれがあるから取り付けられたもの――とかではなくて、お客さんに安心してもらうために設置されたものに違いない。

「でも、どうして黙ってたの? あたしが訊かなかったら、言うつもりなかったんじゃない? ……ってことは、なんか訳あり? ……まさか、一回蛇ちゃん化しちゃうと、しばらく元に戻れないとか!?」

 白夜は顔色ひとつ変えずに、ただただこちらを見ている。獲物を狙っているときの蛇ちゃんみたいだ。

「……さっき言ったこととは矛盾するけど、もし副作用とか反動みたいなのが出るんだったら、蛇ちゃんにはなってほしくないなぁ……」 

「ううん。そういうのはないから平気。……だけど、僕がグミちゃんをあと、疲れて何時間も眠っちゃうかもしれないもんね。それ考えると、先に見せちゃったほうがいいか」

「なってくれるの?♡♡」

「うん。ね」

 白夜はパリッとした白いYシャツのボタンに指をかけた。
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