34 / 178
第1幕『半人半蛇(蛇人間)』【表】
第32話『年齢判明』
しおりを挟む「引かないよ」
たじろいでしまうほど強い瞳だ。そこには蔑みも憐れみもない。
「ほんとに?」
「もちろん。願うのは自由だ」
虚飾のない言葉は、事実だけを簡潔に述べていた。
――――そう。願ったあとのことについては、一切の保証はなされない。換言すれば、願ったからといって、叶えられるとは限らない。
「だ…………だけどさ、白夜くんがそのオーダーを承諾しなかったら、あたしはそのサービスを受けられないんだよね……?」
一旦上げて落とされるなんて、たまったものではない。すかさず確認を取った。
「うん。でも、今回は断るつもりなかったよ。最初から」
「理由は? 気まぐれ? 目に見えてわかる変な人じゃなかったら、どんな注文でも基本的に受けてるってだけ?」
「ううん。違うよ。どれも違う。そんな消去法みたいに決めてないし、思考停止してもない」
色も厚みもあまりない唇がむにゅっと曲がった。への字口をしているのだろうが、あまりの可愛らしさにほっこりしてしまう。
「この部屋に入ってきたときにわかったんだ。『この人なら僕のこと怖がらないし、気味悪がったりもしない』って。だから――――っていうのもほんとなんだけど……。こういうとこ、誤魔化しちゃったら絶対よくないよね。のちのちの信用問題に関わってくる」
「しっかりしてるねぇ! 若いのに偉いな~!」
背伸びして頭を撫でようとしたが――今思えば、なんて度胸だ――、白夜くんはみるみるうちにきょとん顔になった(ので、慌てて手を引っ込めた)。
「若い? これでも三十路超えてるけど」
「ええええっ!?? うっそぉ!? あたしより年上じゃん! しかも五歳以上上確定!?」
衝撃の事実を明かされ、大声で感想を並べ立てる口を覆った。
「いいリアクションだね。教え甲斐あるな」
「いや、だって…………!!」
添い寝を所望してしまった手前、『十六、七に見えていた』とは言えず、ひとまず手を身体の横につけた。
「今からでも、敬語とか使うべきなのかなぁ……ですか?」
白夜くんは取ってつけた語尾を聞くなり、微笑を浮かべた。
「いらないよ。言ったでしょ、ここは『疲れた大人のためのサーカス』だ。わざわざ肩凝る言い方しなくていいって。リラックスした状態で過ごしてもらえなきゃ本末転倒だ。敬語のほうが気楽なら、最初から砕けてなかったと思うし」
「その通り……! じゃあ、お言葉に甘えて、今まで通りにさせてもらうね!!」
「是非そうして。…………それとね、お姉さん?」
「うん?」
年下とわかってからもそう呼んでくれていることにときめいていると、急に視界から彼が消えた。
「まだ話の途中だよ? 僕の告白、最後まで聞いててほしいな」
――――はずはなく。跪いた白夜くんは、あたしを見上げていた。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。




とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる