Temptation Invitation

片喰 一歌

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第1幕『半人半蛇(蛇人間)』【表】

第23話『チケットのないサーカス?』

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「可愛い顔して結構やるねえ!! …………って、?」

 またも重低音強化のヘッドフォンしてるときみたいな圧が耳にかかった。実際に出たのはやや高めの声だったけど、これがまあ大きいのなんのって。
 
 喉からCD音源ならぬ喉に拡声器搭載ってとこ? ――なんて言ってる場合じゃないね!? 

 グッバイ、新札――! あたしたち、短い付き合いだったね――――って、何この茶番!? 
 
 実物の白夜くんが想像の白夜くんの何倍もあたしのツボを押さえてくるから、ハイになっちゃってるのかも。うん、絶対そう。そうとしか考えられない……! 

「うん。指名料、かかるんだ」

 さっくり肯定した白夜くんは切れ長の目を伏せ、もう一度あたしと目を合わせた。

「ここ来たときに『サーカスなのにチケットないんだ?』って思わなかった?」

「思った!! たぶんロビー入った時点でテントの中入ったようなもんでしょ? ……なのに、チケット確認なしで入れてもらえちゃったし、おにーさんも売りつけてくる気配なかったから、そもそも持ってないし」

 蛇っぽさのある彼と至近距離で見つめ合っても全然怖いと感じないのは、綺麗な目のド真ん中に陣取る瞳孔が正円を描いているからかもしれない。昼行性の蛇ちゃんたちと同じだね。

「あたし、動物園とかライブとかのチケット集めるの結構好きなんだけど、やっぱりないの……?」

「デジタルだけど、ここを出るときに発行してるよ。紙で欲しかったら、自分で印刷してもらわないといけないんだけど。不便だし、お金余分にかかっちゃうんだ。ごめんね」

「いいよいいよ、そのくらい全然! でも、なんで最後? 名前入れるサービスがあったり…………したとしても、先払いしてもらって出来なくはない……か?」

「そうだね。お客さんが多いときだったら、待ってもらってる間に作って渡せる。ここで、さっき言った指名料が関係してくるんだ」

 推しへの出費は惜しまない――なんてかっこつけてみても、その実、あたしは薄給と重税に喘ぐ小市民。出せる金額なんて知れたものだ。

「指名料……以外のお金は?」

 緊張で渇いていく喉を潤すように唾を飲み込んで尋ねた。

「かかるね。これっていう名前はついてないけど、遊園地で例えると、アトラクションごとにお金払わないといけない感じ」

「チケットがあくまで入場券でしかないタイプだ!」
 
「そう。代わりに、入場料や使用料、入場したときのワンドリンクとかそういうのは無料」
 
 白夜くんは細長い指をゆらゆらさせている。五本の指がそれぞれミニミニサイズの白蛇ちゃんたちみたいだ。

「うん。入場料がないってことは、基準がないってことだ。人によって料金が違くなってくるから、入ったときに渡すってわけにはいかなくて。食べ物屋さんでいうところのラストオーダーも設定されてないよ」

?」

 サーカスとは無関係そうなワードが出てきた。
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