25 / 97
第1幕『半人半蛇(蛇人間)』【表】
第23話『チケットのないサーカス?』
しおりを挟む「可愛い顔して結構やるねえ!! …………って、指名料?」
またも重低音強化のヘッドフォンしてるときみたいな圧が耳にかかった。実際に出たのはやや高めの声だったけど、これがまあ大きいのなんのって。
喉からCD音源ならぬ喉に拡声器搭載ってとこ? ――なんて言ってる場合じゃないね!?
グッバイ、新札――! あたしたち、短い付き合いだったね――――って、何この茶番!?
実物の白夜くんが想像の白夜くんの何倍もあたしのツボを押さえてくるから、ハイになっちゃってるのかも。うん、絶対そう。そうとしか考えられない……!
「うん。指名料、かかるんだ」
さっくり肯定した白夜くんは切れ長の目を伏せ、もう一度あたしと目を合わせた。
「ここ来たときに『サーカスなのにチケットないんだ?』って思わなかった?」
「思った!! たぶんロビー入った時点でテントの中入ったようなもんでしょ? ……なのに、チケット確認なしで入れてもらえちゃったし、おにーさんも売りつけてくる気配なかったから、そもそも持ってないし」
蛇っぽさのある彼と至近距離で見つめ合っても全然怖いと感じないのは、綺麗な目のド真ん中に陣取る瞳孔が正円を描いているからかもしれない。昼行性の蛇ちゃんたちと同じだね。
「あたし、動物園とかライブとかのチケット集めるの結構好きなんだけど、やっぱりないの……?」
「デジタルだけど、ここを出るときに発行してるよ。紙で欲しかったら、自分で印刷してもらわないといけないんだけど。不便だし、お金余分にかかっちゃうんだ。ごめんね」
「いいよいいよ、そのくらい全然! でも、なんで最後? 名前入れるサービスがあったり…………したとしても、先払いしてもらって出来なくはない……か?」
「そうだね。お客さんが多いときだったら、待ってもらってる間に作って渡せる。ここで、さっき言った指名料が関係してくるんだ」
推しへの出費は惜しまない――なんてかっこつけてみても、その実、あたしは薄給と重税に喘ぐ小市民。出せる金額なんて知れたものだ。
「指名料……以外のお金は?」
緊張で渇いていく喉を潤すように唾を飲み込んで尋ねた。
「かかるね。これっていう名前はついてないけど、遊園地で例えると、アトラクションごとにお金払わないといけない感じ」
「チケットがあくまで入場券でしかないタイプだ!」
「そう。代わりに、入場料や使用料、入場したときのワンドリンクとかそういうのは無料」
白夜くんは細長い指をゆらゆらさせている。五本の指がそれぞれミニミニサイズの白蛇ちゃんたちみたいだ。
「うん。入場料がないってことは、基準がないってことだ。人によって料金が違くなってくるから、入ったときに渡すってわけにはいかなくて。食べ物屋さんでいうところのラストオーダーも設定されてないよ」
「オーダー?」
サーカスとは無関係そうなワードが出てきた。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
先生と生徒のいかがわしいシリーズ
夏緒
恋愛
①先生とイケナイ授業、する?
保健室の先生と男子生徒です。
②生徒会長さまの思惑
生徒会長と新任女性教師です。
③悪い先生だな、あんた
体育教師と男子生徒です。これはBLです。
どんな理由があろうが学校でいかがわしいことをしてはいけませんよ〜!
これ全部、やったらダメですからねっ!
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる