Temptation Invitation

片喰 一歌

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第1幕『半人半蛇(蛇人間)』【表】

第22話『すぴすぴの好きピは最高脱皮(だッピ)!』

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(もしかしたら、蛇ちゃんと一緒で目閉じれないかも……と思ったけど、さっきからまばたきしてるから、それはないか)

 ――――と、ここで蛇ちゃんたちの寝顔を思い浮かべる。といっても、彼らの寝顔は人間や犬猫などの哺乳類のものとは一線を画していた。

(あの子たち、起きてるのか寝てるのかわかんないんだよね~。寝てるときも可愛いとかほんっと羨ましい! よだれ垂らしていびき掻いてるあたしとは大違いだ……。いや、白夜くんほどの美少年だったら、よだれもいびきも大したデバフにならないか……!?)
 
 むしろ、幸せそうな顔でよだれを垂らしてすぴすぴと寝息を立てる彼は垂涎の的だろう。ビッグサイズの抱き枕とか抱いて胎児スタイルで寝ててほしい!

「♪」

 考え事に耽って放置してしまっていたが、白夜くんは妄想が行き過ぎてリアルによだれ(と鼻血)を垂らす寸前のあたしの間抜け面をにこにこと眺めていた。
 
「えーと、白夜くん? 急に黙ってどうしたの?」 

「僕にお客さんなんて久しぶりだなと思って、しみじみしてたんだ。『この錠を開けること自体滅多にない』のと『自由に出入り出来る』ってとこから、お姉さんはわかってたんじゃないかと思うけど」
 
「まあ、なんとなくはね。……新人さんって感じでもなさそうだけど、本当にいなかったの? 白夜くんに会いに来る人!」 

「ええと……。他の人を指名したかった人が暇潰しで指名してくれることはあるけど、僕目当ての人はそんなに…………というか、もしかして初めてかも?」

「うっっっっそでしょお!?!? …………ごめん。うるさかったね」

 我ながら音の圧がすごかったので、小さく謝罪しておいた。

「いや……ちょっと待ってね。一人だけいた……かな。僕の身体がどれだけ蛇に近いか、ここで実験しようとした髪ボサボサのおじいさん。重い荷物引き摺ってきて、帰るときも大変そうだった。煤のついた服着てたけど、今思うと白衣だったかも」
 
「いやいやいや、濃い濃い濃い!」

「そうかなあ。キャラで言えば、クラウンのほうが濃いと思うよ」

「…………それは…………」

 口調は江戸っ子なのに、バリバリの洋装パツパツスーツ着込んでて、顔に傷まであって――。

「うん。確かにそうだね? おにーさんに関しては、次元一個間違えてる感じする! けど、そのおじいさんだって一般人にあるまじきキャラの濃さじゃない!?」

「…………かも。ある意味では、あれも僕目当ての人だったのかな……。あんまりいい思い出じゃないんだけど、指名料ふんだくったから、もういいんだ。許してあげた。出禁にしたから、ここへは二度と来れないしね」

 力説すると、白夜くんも同意してくれたばかりか武勇伝まで披露してくれた。本人、自覚なさそうだけど。
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