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HONEYDEW RAIN
HONEYDEW RAIN<XIII>
しおりを挟む「そんなつもりじゃ…………♡♡」
「なかったんだ?♡ そっかぁ♡ まぁ、そうだろうね♡♡ ……でも、微妙に隠せてないし、隠せてたとしても網膜に完璧に焼き付いてるってわからないかなぁ♡♡ わかってるんでしょ?♡ いつもはかわいいかわいい天使ちゃんなのに、たまにすっごいドSな悪魔ちゃんになるよね♡♡ そういうところも好きだけど、いつかほんとに理性切れちゃいそうで心配なんだよなぁ……♡」
次の瞬間、信じられないことが起きた。なんと、彼がわたしの腕を外し、下着の透けた胸元を穴の開くほど見つめてきたのだ。
「…………あ、そうだった! お風呂沸かさないと!!」
彼の横をすり抜け、ひと足早く浴室に入った。
(背中側も透けちゃってるだろうけど、いちいち気にしてられないし、彼にだったら見られてもいいし。……ものすごく恥ずかしいけど!)
結果的にはお説教から逃れる形にはなってしまったけれど、本当にたったいま思い出したのだから仕方がない。
「先にシャワー浴びちゃっていいよ。身体洗ってるうちにお風呂も沸くと思うし……。冷えちゃってるよね。設定温度ちょっと上げておいたほうがいいかな?」
てきぱきと用意を進めることができたのは、意識してしまっているがゆえの奇跡だろうか。普段のわたしであればこうはいかなかったはずだ。
気恥ずかしくて振り向くことができず、仕方なく鏡越しに語りかけたのに、ばっちり目が合ってしまった。
(なにも驚くところじゃないよね? タオルだけでどうにかできる感じじゃないし、わたしは最初からお風呂に入ってもらってあったまってもらうつもりだったんだけど)
お決まりの穏やかな笑顔を浮かべているだろうという予想に反し、彼は目を丸くしていた。
(お風呂入ってもらってるあいだにしておかないといけないのは、タオルと着替えの用意でしょ。洗濯機はわたしの分があるからまだ回しちゃだめで…………)
その表情の意味について考えるよりも、彼がお風呂を上がるまでに済ませておかなければならないことを洗い出すのが優先だ。
(そうだ! 彼がお風呂から出てくるのに合わせて、なにかあったかい飲み物も作っておこうかな? いつも作ってもらってばっかりだし。たまにはココアもいいかも♡ 買い置きあったっけ? あとで探さないと!)
「え?! いやいや待って。きみが先に入ってきなよ。俺よりきみのが寒がりでしょ」
近年稀に見る回転数の思考を阻んだのは、世界で最も愛おしい声だった。
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