三千世界の鴉なんて殺さなくても、我々は朝を迎えられる

片喰 一歌

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HONEYDEW RAIN

HONEYDEW RAIN<Ⅻ>

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「そんなに?♡」

  恐怖で叫ぶ顔の絵文字みたいになっている彼には悪いけれど、危機感の欠乏しているわたしにはそれが悪いことだとは到底思えなかった。

「いやいや♡ その『わくわく』ってお顔はなに?♡ そんな嬉しそうにされても困るんだけど♡♡」

「だって……♡♡ 『次の日起き上がれなくなっちゃうかも』ってことは、『君がたくさんわたしのこと愛してくれる』ってことだよね?♡ だから、喜ぶ以外のことができないんだけど……♡」

「…………きみさぁ、いまの自分の状態わかってる?♡♡ 言わないでいてあげたほうがいいのかなって思ってたんだけど、あんまりにも危機感ないみたいだから、教えてあげるね?」

 ずっと合わせてくれていた視線がすいーっと下に下がっていって――――。

「かわいい下着、透けちゃってるよ?♡ 着替えのとき面倒なのはわかるけど、念のためインナーも着ておいたほうがいいと思うなぁ♡♡ ……もし俺以外の男に見られたらと思うと、気が気じゃないしさ?」

 すべて話し終えた彼は、ふいっと顔を背けた。
 
「…………つ、次からはちゃんと着るね…………!」

 首を折り曲げて真っ先に目に入ったのは、真っ白なシャツの下に透けたわたしらしくないブラジャーだった。

(よりによって色が濃くて、持ってるなかでも攻めたデザインのやつ……! 買い替えないといけなかったけど、なかなか決まらなくて買った福袋に入ってたのだから、自分で選んだわけじゃないけど、彼にはそんなことわかるはずないし…………。違うの! 意外と気に入ってるけど、これは私のセンスじゃないの……!)

「……いまだから言えるけど、きみがさっき万歳したときだってさ、『もしかして脱がせてほしいのかな?♡♡』って思っちゃったんだよ?♡♡ すぐ『お手上げ』なだけかって気付いたし、勘違いしちゃって恥ずかしいから秘密にしておこうとも思ったんだけど、俺のこと信用しすぎてて危ういから黙っておけなかった♡ きみの彼氏はきみが思ってくれてるほど紳士じゃないし、思い込みも激しいほうだよ?♡♡」
 
 わたしの心の声など聞こえていない彼は、再びこちらを向いた。
 
「っ♡♡ そのくらいで君のこと好きじゃなくなったりしないもん……♡」
 
「よかった♡♡ でも、気付いてなかったんだとしても、そんな恰好で『いますぐにでも襲ってください♡』って意味に受け取られかねないこと言ってくれちゃってさ?♡♡ 俺の理性の強さ試してる?♡ 突然だとちょっと分が悪いんだけど♡」

 そう言いながら、彼の視線はわたしの顔と胸元を交互に行き来している。下着の下まで暴かれてしまいそうなそれに恐れをなし、自分で自分を抱き締めた。
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