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HONEYDEW RAIN
HONEYDEW RAIN<Ⅲ>
しおりを挟む(こんなに力強かったんだ!? いつもは加減してくれてるんだね……♡♡)
「…………ごめん、力入りすぎた。でも、こんな雨の中、身ひとつで駅まで走っていくつもり? たぶん時間的にタクシーだって捕まらないし、他の方法がなさそうなのもわかるけどさ、もうちょっとこう……弱まった瞬間を狙うとかさ……!」
わたしが空気を読まずにときめいているのに対し、真面目な彼は言葉を選びながら思い直すように勧めてくる。
「もちろんタオルくらいは被るけど、ちょっとお転婆すぎるよね……。君はもっとおしとやかな女の子のほうが好み……?」
後先考えない行動を心配してくれていることに感謝を述べるつもりが、好きなタイプについて尋ねてしまった。
(なに訊いてるんだろ、わたし! でも、この際はっきりさせちゃったほうがファッションの方向性を決めるのにも活かせるかもしれないし……!! 正反対のタイプでもめげたりしないんだから! ……ちょっと傷付くかもしれないけど……!)
今後、なにかを口にする際にはときめきが収束するのを待ったほうがいい。いまさらすぎる教訓を胸に返答を待っていたけれど。
「俺はむしろ好きだけど。見た目はお嬢様とかお姫様って感じなのに、結構思いきりいいとこあって。そこがかえってお姫様っぽさを増してるのかな?♡ 俺、きみのそういうギャップがたまらなく好きなんだよね♡♡ そういうタイプがとかじゃなくてきみが好きなだけかもしれないから、ちゃんとした答えにはなってないかもだけど♡♡」
悲観的な予想が外れたばかりかまるごと肯定されてしまい、少し拍子抜けした。
「え? あ、ありがと?」
「……さっきのはさ、『駅まで走っていくのはどうなの?』って言いたかったわけじゃなくて……。いや、若干そういうニュアンスもあったかもだけど、『今日は家まで送らせてくれないの?』ってこと。きみが気にしないといけないのは雨だけじゃないでしょ。もう暗くなり始めてるし、最寄りに着く頃には真っ暗なんじゃないかと思うけど…………」
彼は言葉からも表情からも疑問符を発生させているわたしの目を見て、真剣に訴えかけた。
「大丈夫だよ、そこまで遠くないし」
グラウンドの土に当たって跳ね返る大粒の雨を眺めながら、ここから動けるのは何分先になるだろうと考えた。
「そうかなぁ? 俺の家よりは若干駅寄りかもしれないけど、大差ないんじゃない? どうせ濡れるのは確定なんだから、いつもみたいに送らせてよ。じゃないと、俺……心配で心配で生きた心地しなくなっちゃうって…………」
「君って本当に心配性だよねぇ。着いたら連絡入れるのに。それじゃだめ?」
彼と一緒にいられる時間が長くなるのはいいけれど、どうせだったらどちらかの家でいつものように勉強会を開催したほうがよっぽど有意義に決まっている。
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