上 下
124 / 124
ビフォア・アフタースクール・トーク

ビフォア・アフタースクール・トーク<前編>

しおりを挟む

 大好きな彼とはあれから目立った進展もないまま、時だけが過ぎ――――。その日最後の休み時間、わたしは教室の隅で窓華ちゃんとおしゃべりをしていた。

 高校生女子が特別親しく信頼の置ける友達と顔を合わせれば、高確率で恋愛か趣味の話題になるのではなかろうか。

 わたしたちも御多分に洩れず、恋人とのあいだにあった出来事――窓華ちゃんはともかく、わたしのほうはほとんどが惚気になってしまっているけれど――について話すのが、授業の合間のささやかな楽しみだった。

「え? うっそでしょ!? ……会長、まだなんにもしてこないの? こんなかわいい子捕まえておいてキス止まり!?」

 窓華ちゃんは片手で口を押さえた。ちゃんと声量も抑えてくれているけれど、窓際のいちばん後ろとその前の席で交わされている言葉なんて、他の誰も気に留めないだろう。

 後ろの席にいるわたしは両肘を立て頬を包んでいるのに対し、彼女は椅子に横向きに腰掛け、長くまっすぐ伸びた脚を組んでいる。

(褒め上手だなぁ。窓華ちゃんのほうがずっとかわいくて綺麗なのに)

 先の尖った指は、なにもしていなくてもイイ女感満載で羨ましい。爪までばっちりおめかしした彼女と最後に出掛けたのはいつだったか。

 お互い恋人と順調だという証左とはいえ、彼女だってわたしの大切な人には違いないから、本音を言うと少し寂しい。

(…………というか、そっかぁ。窓華ちゃんにはこの前のこと話してなかったんだった。試験期間にあんなえっちなことしちゃった……というか、させちゃった? なんて、恥ずかしくて言えないよ……!)

 この前オープンしたデートスポットの感想(窓華ちゃんはプレオープンイベントに当選したらしく、一般開放よりもひと足早く彼氏さんと遊んできたのだそうだ)から始まった話は、ひとつのエピソードから惚気へと発展し、今度はわたしがつつかれて、進捗報告(?)をしている――――というのが現在の状況だった。

(だけど、キスより先のスキンシップがまだなのは本当だし、嘘は吐いてないよね。……うん、かろうじて嘘は吐いてない……。これはただの隠し事…………!)

 付き合ってちょうど一年くらいになる彼氏さんの話をする窓華ちゃんはいつも以上にかわいかったし、デートスポット自体もとても楽しそうだった。

 今度、彼を誘ってみようかと考えていたところに話を振られて面食らったけれど、一向に進展しない彼との仲に焦燥感を抱いていたので、ちょうどいい機会だったのかもしれない。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

パート先の店長に

Rollman
恋愛
パート先の店長に。

処理中です...