三千世界の鴉なんて殺さなくても、我々は朝を迎えられる

片喰 一歌

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Interlude

Interlude<LXXXIII>

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(『また夢見が悪くても大丈夫なように』って考えて、ちょっと強引に通話の約束してくれたの?♡ ……君はわたしみたいに後ろ向きじゃないから、『もう悪い夢を見ないで済むように』かもしれないね)

 しぶしぶ承諾したみたいな返事をしたあとに閃いたのは、ひとつの可能性。彼がわざわざこのあと通話の約束を捩じ込んできた目的と理由。

「そうこなくっちゃ♡♡ お皿には出さなかったけど、きみの好きそうな新作も入れたから、このあとでも明日でも感想聞かせてよ♡♡ 気に入ったら次は一緒に買いに行こう♡ それと……♡」

 ――――彼の視線を追いかけてギフトバッグを見た、その瞬間。頬に柔らかい感触と吐息が当たり、ばっと顔を上げた。

「え……?♡♡ なんでキス……♡♡」

 彼の唇が去ったあとをさすりながら問いかける。

「ふふふ♡ いまから慣れておいてもらおうかなぁと思って♡♡ 『いってらっしゃい』のキスされる前に『いってきます』のキスするのは珍しいかもだけど♡ ……きみのほうは?♡ なにか忘れてるものない?♡♡」

 彼は見るからに器用そうな人差し指で自身の頬を押し上げた。

「…………ある、かも……。ちょっとごめんね……!」

 いつもはストレートな彼の遠回しな催促に撃ち抜かれ、首にしがみついて唇を合わせた。指定された以外の場所への突進するようなキスにもかかわらず、彼は上手に受け止めてくれた。

「……いってらっしゃい。気を付けて帰ってね」

「うん♡ ♡♡」

 彼からのお返しは目尻へのキスだった。『またすぐにお顔見られるから泣かないで♡♡』というメッセージのつもりだろうか。彼を困らせてしまってもいけないから、回していた腕を下ろした。
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