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Interlude
Interlude<LXXXII>
しおりを挟む「……あぁ、なるほどね?♡♡ ひとりじゃ寂しかったら、通話しながら一緒に食べる?♡ 俺もきみがしあわせそうに甘いもの食べてるとこ見逃したくないし♡♡」
ギフトバッグと睨めっこするわたしを見ていた彼は、にやっと左の口端を吊り上げた。
「もう♡ そういう問題じゃないってわかってるくせに……♡♡」
「まぁね♡♡ きみは太っちゃいそうで心配なんだろうし、別に『絶対絶対、今日中に食べてね!』なんて無理強いしようとは思ってないけど、俺はなんでもきみと共有したいんだ♡」
「共有……?♡♡」
「そう。放課後にふたりっきりで勉強会開いてるのも、お昼休みに一緒にお弁当食べてるのも、時間の共有でしょ?♡♡」
彼とはそこそこ身長差があるはずだけれど、話していて一度も首の痛みを感じたことがないのは、彼が身を屈めて顔を寄せてくれているおかげなのだと。
もしかしたら、わたしの視界を体感してみたいという気持ちのあらわれでもあるのかもしれない。
いつもいつも自然に歩み寄ってきてくれる君の視界に、背伸びするたけでは全然近付けない自分がもどかしい。転んでしまいそうで挑戦したことはなかったけれど、次の靴はこれまでより高いヒールにしてみようか。
「そうだね?♡」
小さな小さなサプライズの計画をうっかり明かしてしまわないように、打ったのは短い短い相槌。そっけなく聞こえていなければいいけれど。
「十分幸せだし、贅沢だなって思うよ。……でも、どうせならそれだけじゃなくて、感情とか感覚も共有したいんだよね。俺は」
「同じものを見たり聞いたりしても、まったく同じ感想を持つことなんてないのに?」
外食に行ってもなるべくひとつは同じものを頼もうとしたり、興味のないジャンルの映画にも付き合ってくれたりする彼のことをずっと不思議に思っていたけれど、彼にとっては同じ感想を抱くかどうかはさしたる問題ではなく、わたしの感想を想像すること自体を楽しいと思っているのかもしれない。
「…………まぁ、それはそうなんだけど。きみって急にリアリストになるよね……じゃなくて。わざわざ『まったく同じ』なんて言葉使うからには、本当は俺の言いたいことも大体わかってるんじゃない?♡♡」
確信に満ちた声が返事を急かす。
「またあとでね。……画面越しになっちゃうけど」
半日にも満たない時間を待てないのはわたしも同じだ。離れていても甘いひとときを過ごしたあとなら、きっとどんな悪夢を見ても大丈夫。
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