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Interlude

Interlude<LXXV>

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「はい♡ 召し上がれ♡♡」

 準備はものの数秒で整ってしまった。

「……ありがとう。でも、全部外す必要はなかったんじゃないかなぁ……!」

 なぜかボタンを全部外してしまった彼に抗議した。――――そこそこ妄想力の高いわたしは、ボタンをすべて外しているところを見せられただけで、その先のことまで意識せずにはいられなかったから。

「照れてるの?♡ ちゃんと下に着てるのに♡ しかも、色濃くて全然透ける心配ないやつ♡♡」

 彼はTシャツの裾を引っ張ってみせた。

「それはそうなんだけど…………!!」

 暗い紺色の生地はしっかりしていそうだ。

 しかし、胸からお腹にかけて大きくプリントされているやさぐれたバーニーズマウンテンドッグらしきキャラクターが気になって仕方ない。

(おもしろTシャツ…………にしては高そうなんだよなぁ……。顔がいいからなに着ても様にはなっちゃうんだけど、やっぱりファッションセンスが独特な気がする……!)

 わんちゃんと見つめ合っていたら、彼が視界に割り込んできた。

「うわっ!?」

「驚かせちゃってごめん♡ でも、そっちじゃなくて俺のこと見て♡♡ ……っていうのもわがままか。自分で見せといてって感じだよね」

 照れくさそうに鼻の頭を掻く仕草は、少女漫画のワンシーンと見紛うほどだった。

「これ最近気に入ってて、きみにも見せたくなっちゃったんだ♡♡ 別にキス以上のこと期待して全開にしたわけじゃないよ♡ 説得力ないだろうけど♡」
 
 元の体勢に戻った彼は、肩を揺らして笑っている。
 
(この前は珍しく普通の服かと思ったら。胸ポケットでイカとタコが社交ダンスしてたし……。どっちも脚長くてスタイル最高によかったなぁ……。一般的にはダサい判定になっちゃうんだろうけど、わたしは結構好きなんだよね。彼のセンス。あと、『最近気に入ってるから見せたい』ってかわいすぎ……♡ 宝物自慢してくるちっちゃい子みたい♡♡)

 微笑ましい気持ちで眺めてたけれど、徐々に視線を下げていったら喉仏が控えめに主張していて、彼はすでに少年期を終えた立派な青年であるということと同時に、彼が前をはだけることになった理由を思い出した。

「……えっと。そろそろしていい?」

 口をかぱっと開けて歯を見せると、彼の笑顔は数段落ち着きを増したものに切り替わった。

「もちろん。いつでもどうぞ?♡」 

 真正面に待ち構えるアダムの林檎の誘惑を振り切り、目指すは首と肩の継ぎ目だ。
 
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