三千世界の鴉なんて殺さなくても、我々は朝を迎えられる

片喰 一歌

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Interlude

Interlude<LXXIII>

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「逃げないよ。逃げるつもりなんてないし、ほんとに逃げられないと思うけど……ちゃんと捕まえててね?♡」
 
「当然♡♡ 逃げても逃げても追っかけて捕まえ直してあげるけど、ずっと俺のところにいてもらうのがベストに決まってるもんね♡♡ …………そういうわけで、『きみは俺のもの』って印、つけちゃおっかなぁ♡ 大丈夫大丈夫♡ 痛いことなんてしないから安心して……♡♡」
 
 彼はデコルテにもキスを落としたあと、最後に首筋にかぷっと歯を立てて犬歯を食い込ませた。

「ぁぁ……っ♡♡」

 噛まれたところに生まれたぞくぞくとした快感は下へ下へと下っていって、お腹の奥がきゅうっとなった気がした。

「あはは♡♡ いまの声かわいい♡♡ もっともっとかわいい声が聞けるの、楽しみしてるね?♡♡ ……じゃなくて。……痛くないように加減したつもりなんだけど、大丈夫だった?」

 目尻を拭った彼は、そのまま私の涙をぺろっと舐め取った。

「全然平気♡」
 
「…………試験前じゃなかったら、もうちょっと先のことまでしちゃってた気しかしないし、よかったよ。試験期間様様だね♡♡」

 涙を舐めた直後、彼の瞳が大きく揺らめいたように見えたけれど、その正体が涙の膜でないことを私は知っている。

 彼の瞳を揺らめかせたのは、情欲と呼ばれるものだ。ひた隠しているだけで、本当は彼も決して消えることのない炎をその身に宿しているのかもしれない。

「試験前だからって理由でセーブできる人もそんなに多くないと思うし、やっぱり君ってすごいよね。他の人とは全然違う。……でも、本当に大丈夫? 不完全燃焼じゃない?」

「気にしてくれてありがとう♡♡ 欲を言えば、きみにもかぷってしてもらいたいんだけど、さすがにダメかな?♡♡」

 『を言えば』なんて言っているくせに、あどけない笑顔の彼とその表現はミスマッチもいいところだ。

(いま、『かぷっ』って言った…………!? おんなじ擬音で嬉しい♡♡ というか、自分の噛み付き方が『かぷっ』だったって思ってるのかわいいな……♡♡ ちゃんとかわいい自覚はあるんだ……)

 とびっきりのかわいさを浴びてフリーズしていたら、離れたはずの顔が再度近付いてきた。
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