三千世界の鴉なんて殺さなくても、我々は朝を迎えられる

片喰 一歌

文字の大きさ
上 下
111 / 187
Interlude

Interlude<LXXI>

しおりを挟む

「うん♡♡ さっきだってつけたくてつけたくてどうにかなっちゃいそうなのを必死に抑えてたんだよ?♡♡ 別に感謝を強要したいとかじゃなくて、ただの裏話的な感じで捉えてほしいんだけどさ♡♡」

 彼は何度もわたしの手を握り直している。
 
「わかった♡ ……だけど、その代わり、君も気負わないでいつもみたいに話してね。裏話って、『知ってても知らなくても支障はないけど、知ってたら何倍も味わい深かったり楽しくなったりする内輪話』のことだもんね?♡♡ だから、どう思われるかとか気にしないで話してほしいの。……わたしには」

 不安や恐怖、緊張といった感情を表に出さないように努めている彼の脆い部分を特別に見せてもらえているようで嬉しい。

「わたしはきっとどんなきみも大好きだし、いまはまだ知らないきみのこと教えてもらって、びっくりしたりいま以上に好きになっちゃったりすることはあっても、冷めたり嫌いになったりとかはないと思うから。……お願いね?」 

 ――――けれど、彼が見せてくれているのは一部だ。それ以上踏み込んでいいのかという迷いがないわけではなかったけれど、嫌ならきちんと拒否してくれるだろう。

「…………きみにはかなわないなぁ。一生かかっても勝てる気がしないよ♡♡」

 安堵のため息のあと、手にこもっていた力が抜けていった。安心感を与えて、なおかつ彼の心の扉を開くというミッションは成功したらしい。

「それはわたしの台詞なんだけどなぁ……♡」 

「じゃあ、お言葉に甘えて、いつも思ったり感じたりしてることをそのまま言わせてもらうことにするけど……♡♡」

 彼の手はわたしの手を離れていった。ぬくもりの去ったあとの手は平熱を下回ってしまったかのように冷たく感じられた。

「叶うなら全身にキスマークつけて、きみを薔薇の妖精さんみたいにしたいと思ってるよ?♡♡ そしたら、だぁれも寄ってこられないだろうし♡♡ ……でも、そんなのはまだましなほうで、本当はもっと強制的に……直接的にきみを俺のものにしたい……。にしちゃいたいって思ってる…………」

 しかし、彼の言葉は、合わせた手のひらに感じていたぬくもりとは比にならないほどの熱を頬とお腹の奥に宿していった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

処理中です...