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Interlude

Interlude<LXIX>

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「……まぁ、俺の場合、爪が伸びてると困るにあるんだけど♡♡」

 泣き出す寸前にもかかわらず、心地好い声が耳を潜り抜けていったおかげで、あっという間に涙は乾いていった。

「鬱陶しいからじゃないんだ?」

「前まではそれがいちばんの理由だったんだけど、いまは違うよ。いまはね、『手繋いだりするときに、きみを傷付けないようにするため』みたいな感じ♡♡」

 彼は立てた人差し指を顔の前でくるくるさせている。その仕草がなにを意味しているかはわからないけれど、楽しげな気分が伝わってくるようで心が浮き立った。

「なるほど? ……でも、手繋ぐときに爪が当たることって、そこまでないんじゃないかなぁ?」 

 改めて美しい指先に目を遣ったけれど、ひとつひとつがわたしより面積の広い角もなく短く整えられていて、彼の心配しているようなことが起こる確率は非常に低そうに思えた。

「うん♡♡ だから、『』って言ったんだよ♡ きみの身体は普段見えてるところだけじゃなくて、まで、大事に大事にしないといけないからさ♡♡」

 もう一度、先ほどと同じように指を絡められた。

 目を細めた彼は嫌味のない色気を漂わせているけれど、嫌味がないからといって控えめというわけではなく、甘く考えていたら飲み込まれてしまいそうだ。

(あぁ、そっか……。君もちゃんと考えてくれてただけじゃなくて準備もしてくれてたんだね。でも、相手の身体に傷を付けちゃう可能性なんて頭になかったわたしとは大違いだ)
 
 そういうことなら、わたしにもおぼえがある。少し迷ってから、正直に話してみることにした。 
 
「…………ありがとう。わたしもね、さっき君とおんなじようなこと考えてたの。『そういうことするとき、君の背中傷付けないように、もう少し短くしておこう』って……」 

「そんなの気にしないでいいのに♡♡ 背中なんて自分じゃ見えないし、俺の着替えのスピードだったら他の奴にも見られる心配ないと思うから、ふたりだけの完全に秘密にできるだろうし……♡♡ きみにだったらつけてほしいくらいだよ?♡ 爪の痕もキスマークも……♡」

 彼は合わせていた手をスライドさせ、伸びた爪の先に指先を食い込ませようとしている。
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