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Interlude
Interlude<LX>
しおりを挟む「んっ♡♡ ……いいけど♡ 君のは『舐める』じゃなくて『食べる』でしょ……っ♡」
珍しく承諾を得る前から動き出していた彼は、びくんっと大きく跳ね上がった肩をするりとひと撫でした。
このあと自分が食べられてしまうことをわかっているからなのか、赤くみずみずしい林檎に齧り付く前に、適当な布や着ている服の袖で、つるつるの表面を拭っているようだと思った。
「言われてみれば、そうだった♡♡ でも、きみがいけないんだよ?♡♡ おいしそうなカラダ見せつけてきてさ……♡ 舐めるだけで我慢しろなんて生殺しだって♡ まぁ、『舐めたい』って言ったのは俺だし、まずは舐めさせてもらうけど……♡♡」
彼が言葉を発するたびに浴びせられていた湿った息は、突如として止んだ。その直後、吐息よりもさらに湿った感触のものが無防備になっていた肌の表面をなぞる。
「……っ♡♡」
片手で口を塞いだけれど、甘い息が漏れるのを防ぐことはできなかった。
「…………は♡ あっま……♡♡ なにこれ……♡♡ いつまでも舐めてられる♡」
桃色の靄に包まれていく思考のなか、届いたのは恍惚とした声だった。
(あまい……?♡ わたしが……?♡ 君の声のほうが甘いんじゃないかと思うけど……♡♡)
無糖のストレートティーを好んで選ぶから忘れてしまいがちだけれど、そういえば彼も甘いものが好きだった。
この空間を満たす幸福な匂いの元――――。彼は『わたしの好きなお菓子だけ集めてみた』と言っていたけれど、元はどれも彼におすすめされた逸品だった。
「……というか、食べたいな……♡♡ 食べちゃおう♡♡ いただきます♡」
ボディミルクの香料かと思ったけれど、首はそこまで重点的に塗り込んでいない。では、彼が『甘い』と評しているものとは一体なんなのか。
「!?」
甘さの正体を掴めないまま、かぷっ、と硬いエナメル質が当てられた。
「ぁ♡♡ は…………、ぁっ♡♡」
彼の歯が凝り気味の肩に食い込んでくるようなことはなかったけれど、なぜか肉食獣が草食動物を捕食しているシーンを想起してしまった。
百獣の王たるライオンが、横たわったシマウマの腹に鋭い牙で穴を開け、そこから肉を喰らっている。
白と黒の美しい縞模様に内臓のピンクと血の赤が加わり、草原の景色に彩りを添えて――――。
自然界では日常茶飯事なのだろうが、ドキュメンタリーで観た映像は、幼き日の私にはとても衝撃的だったのをよく覚えている。
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