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Interlude
Interlude<LVI>
しおりを挟む「…………そっか。きみも俺と同じで不安だったんだね」
そこに掛けられたのは、そこはかとない安堵の滲む声だった。わたしが百面相しているあいだに、彼も彼でいろいろと考えていたらしい。
「不安……。うん、そう。すごく不安だよ。完全無欠の生徒会長様は、モテモテだし? ……女子で君のこと嫌いな子、ひとりもいないんじゃないかなぁ。生徒会長様というか学園の王子様だよ、君は」
彼を好きな気持ちと同じくらい、不安も口にしただけ巨大化した。厄介なことに、一回ごとの成長幅は『好き』以上に大きい気がする。
でも、前から感じていたことだ。完全無欠の生徒会長様および学園の王子様――――の隣にいるわたしは、一体、何者なんだろう。
よくてどこにでもいる生徒会書記、悪くて一般通過モブあたりなのではないか。
彼に想いを寄せる人に『この人のなにがよくて付き合っているのか』といちゃもんをつけられたとしても、なにも反論はできない。
わたしにだってわからないし、彼から根気強く説明されたところで、その何割を素直に受け取ることができるかといったところだろう。
それでも、いつも以上ににっこりと口角を上げ、頬を恋色に染めた彼は、いくつもいくつもわたしの好きなところを挙げてくれるに違いない。
「自分で言い出しておいてあれだけど、恥ずかしすぎるからもう言わないで……! あと、別に王子様ってキャラでもないんじゃないかと思うけどなぁ……」
いまこの場にいる彼は、妄想の彼とは異なる理由で頬をぽっと染めていた。
彼は求めに応じて軽度のナルシストっぽい振る舞いを選ぶこともあるけれど、実際の彼は自身過剰とも慢心とも程遠い、とても謙虚な人柄だということをわたしは知っている。
「まぁでも、きみがお姫様っぽいから、そっちはいいや♡♡ 盗賊が王子のふりして、なんだかんだで本物の王子になっちゃった話だってあるもんね♡ 形だけ先に作って、現実を追いつかせればいいだけか♡」
自己評価の低さを補うかのごとく、わたしを過大評価しているのは本当に不思議だし、少し困ったところでもあるけれど。
(……確かに君は、いつだってわたしに新しい世界を見せてくれるひとだね。王子様っぽいとかどうとかじゃなくて)
彼のいう数十年前に公開されたアニメーション映画(および数年前に公開された実写映画)の象徴たる歌のイントロダクションが脳内に流れ出した。
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