三千世界の鴉なんて殺さなくても、我々は朝を迎えられる

片喰 一歌

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Interlude

Interlude<XL>

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「健全モードって…………添い寝?♡」

 不健全モードの添い寝選ばなかったほうには興味がないみたいなふりをして、微笑み返す。

「そう♡♡ まずはそっちからかな♡ おんなじベッドで寝るなんて、絶対幸せに決まってるよね♡♡」

 また一歩、進展の日が遠のいたかに思われたけれど、わたしたち(ハグ・キス・手を繋ぐ以上のことは一切していない)の現状から見ると、同じベッドで寝るだけでも大きな一歩なのではないか。

「ね♡ どきどきしすぎて寝られなくなっちゃうかもだけど……!」
 
 添い寝自体は数日前にも話題にしたし、約束まで取り付けていたけれど、あれは旅行の計画で少し先のことという感じがしていた。
 
 ――――しかし、それが一気に現実味を帯びてきて、途端に頬が熱くなってきた。

「あはは♡♡ 確かに♡ でもさ、それならそれでいいんじゃないかな?♡ 次の日も休みだったら、眠くなるまで起きてたってへっちゃらでしょ♡ お布団のなかで、夜通しおしゃべりするのも楽しそうだと思わない?♡♡」

 からっと笑う彼は、この前話していたのとは別の感じの添い寝を想定しているようだ。
 
 この前約束していたのが恋人とのスキンシップだとすれば、いま話しているのは仲のいい友達同士のお泊まり会のような――――。

君のおうちここで?♡」

 考えていたのとは違うけれど、それも楽しそうだ。自然と声が弾む。

「そうだね♡♡ どこでもいいんじゃないかと思うけど……♡ 朝までおしゃべりするって考えたら、ここがいちばん迷惑かけにくいかな?♡」

 俄然乗り気になったのを感じ取った彼の話にも、いっそう熱が入る。このまま計画に突入してもおかしくない。

「お布団でおしゃべりするの楽しいもんね」
 
「…………へえ。経験済み?」

 彼の視線が真実を見定めるようにわたしの瞳の奥深くに忍び込んでくる。優秀な嘘発見器みたいだ。

「修学旅行でだよ?」

「そっか♡ だったら、いいや♡ ……真っ暗ななかで布団被ったらさ、世界にふたりっきりみたいな気分になれるかな?♡♡」

 センサーをパスして安堵していたところに届けられたのは、ピュアでロマンティックな笑顔と言葉だった。大人顔負けの色気を放っていた彼とは別人のようで、微笑ましい気持ちに包まれた。

「試してみようよ♡ わたしも知りたいし、君とふたりっきりの世界、体験してかんじてみたいな?♡」
 
「…………ずるいなぁ、きみは♡♡ そんなふうに言われたら、不健全モードのスイッチ入っちゃいそうなんだけど♡」

 視界の端で、そこまで目立たない喉仏が大きく動いた。
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