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Interlude
Interlude<XXXVIII>
しおりを挟む「食べ物で遊ぶのは論外として、食べ物や飲み物が乗ったテーブルの近くで遊ぶのもダメだったね」
上から注がれる視線はこのうえなく穏やかで、ずっとそうして見つめていてほしいと願ってしまいそうになる。
「そうだよ! ……ぎゅーってしてくれたのは嫌じゃなかったけど……♡」
甘く疼く胸を押さえて身体を起こそうとしたけれど、離れがたくて断念する。もう少しここに間借りしていてもいいだろうか。
「ほんと?♡♡ 本当は俺も『手伸ばせば届くところにいたい』じゃなくて、いっつもくっついてたいって思ってるよ♡ いまみたいにきみが腕のなかにいてくれたら、もう最高の気分♡」
「そこまでは言ってないもん……♡」
「そっかぁ♡♡ 残念だけど、きみにもそう思ってもらえるように頑張ろうっと♡♡」
説得力に欠けた否定を受けても、彼はほわほわ笑ってわたしの毛先で遊んでいる。
「…………そろそろ起き上がっていい? 嫌とかじゃないんだけど、ちょっと体勢がきつくなってきちゃって……」
背中に置かれた手には特に力がこもっているわけではなかったけれど、断りも入れずに押しのけたら、なんとなく彼を悲しませてしまう気がした。
「あ、そうだよね! ごめん! またいつでもおいでね♡♡ 次は俺のこと椅子にしてくれてもいいし♡」
彼の言葉を聞きながら、椅子に掛け直した。木製の椅子の上のシートクッションは座り心地がよくて、油断していると眠くなってしまいそうだ。
「……きみは帰るまでのちょっとの時間、こうやって俺の隣に座ってるだけじゃなくて、これからの人生ずーっと俺の隣にいてくれるつもりだったんだねぇ♡♡」
視線を感じて隣を向くと、彼は肘をついてこちらを眺めていた。
「なんで言われるまで気付かなかったんだろうなぁ……! こんな勘違い、普通しないよね!? 恥ずかしすぎる……!」
少し前の話を蒸し返されるとは思っていなくて慌ててしまったけれど、恥ずかしいだけで嫌ではなかった。
「普通かどうかなんてどうでもいいんじゃない?♡ 俺はめちゃくちゃ嬉しかったよ?♡♡ 話が噛み合ってないことに気付いたとき♡ 俺との将来、ちゃんと考えてくれてたんだなぁってわかって♡♡ こんなに嬉しい擦れ違い、起こそうと思って起こせるものじゃないでしょ♡」
心があたたかいもので満ちていく。導かれるように、テーブルの下で自分の左手の薬指を握った。
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