三千世界の鴉なんて殺さなくても、我々は朝を迎えられる

片喰 一歌

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Interlude

Interlude<XXXVI>

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「ヒントはもうこのくらいでいいか♡♡ ……ってことで、いまからお待ちかねの答え合わせに入るけど♡ さっきから、きみと俺は全然別のことについて話してて、会話が嚙み合ってるようでそうじゃなかったみたい♡♡」

 わたしが咀嚼を終えたのを見計らった彼は、紅茶を含んでから口を開いた。

「……あっ! そっかぁ! 君とわたしは違う『』について話してたってこと……で合ってる?」

 先刻の会話を思い返している途中で、ぱっと閃いた。すべてがわかったあとだと、同音異義語というのはヒントどころかほとんど答えだったと思う。

「ピンポーン♡♡ 急に『気が早い』とか『年齢がどう』とか言い出すから、なにかと思ったよ♡♡ 気付いたときは感動したなぁ♡ 『なるほど、そっちの籍か~♡♡』って♡♡」

「君は『にきてもいいよ』って言ってくれてたんだよね?」

 期せずしてコントを繰り広げてしまっていたことを内心恥ずかしく思いつつ、平静を装って確認を取った。

「そう♡ でも、きみにきてもらうんじゃなくて、俺がきみのほうに移動してもいいんだ♡ どっちが移動したって隣同士にはなれるからね♡♡ どうする?♡ 俺、いまからそっち行こっか?♡♡」

 彼は立ち上がりたくて仕方ないみたいに、両手をテーブルにつけている。

「…………ううん。今回はわたしが君のほう行っていいかな……?♡」

 しかし、わたしはいつも彼にしてもらうばかりだ。形の有無にかかわらず、一方的に与えられてばかりで、なかなか思うように返せていない。

 この程度でチャラにできると思っているわけではないけれど、少しでも『好き』が伝わればいいと思いながら静かに席を立った。

「ダメなんて言うわけないじゃん♡♡ おいでおいで♡♡ カップは俺が移しておくから♡」

 彼はその宣言どおり、わたしのカップを移動させ、その手で椅子を引いてくれた。

「きたきた♡♡ 待ってたよ~♡ 真正面に座るのってカップルのド定番っぽいけど、ちょっと寂しい気がするのは俺だけ?♡」

「……んー? どうかなぁ?」

 テーブルに対して垂直――――ではなく、少しだけ膝を彼のほうに向け、足を揃えて座った。

「寂しいって!! まず、全然近くにいる気しないし、『あーん』してあげたくてもテーブル小さくないと届かなくてできないもん」
 
 さっと確認した彼の膝もわずかにわたしのほうを向いていた。
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