三千世界の鴉なんて殺さなくても、我々は朝を迎えられる

片喰 一歌

文字の大きさ
上 下
74 / 187
Interlude

Interlude<XXXIV>

しおりを挟む

「うん♡ わたしも君とずっと一緒にいたい……♡ ……のは同じだけど、いまは隣同士じゃないよね?」

 テーブルを挟んで対面する彼に問いかけた。

 考えあぐねて必死に捻り出したのが、こんな揚げ足取りめいた言葉だなんて。
 
 前半部分で終わらせておけばよかったものを、余計なひと言を付け足してしまって、せっかくのいい雰囲気が台無しだ。

「そうだね?」

 彼は一瞬だけ目を丸くしたけれど、すぐに穏やかな微笑を湛えた。いつもどおりの大人な対応だけれど、見えないところで好感度が徐々に下がっていてもおかしくはない。

(あぁ~……! もう、ばかばか!! せっかく『かわいい♡』って思ってもらえるチャンスだったのに!!)

「…………でもさ、こーんないい雰囲気のときに、そんな屁理屈言うかなぁ♡」

 スキンシップをしているときと同じくらい甘い声が鼓膜を震わせた。

「!」

 刹那、飛び上がった心臓が肋骨を突き破って飛び出してしまいそうなほどの緊張が駆け抜ける。

「うん。自分でもそう思う……。ごめんなさい……」
 
「いやいや♡ 謝ってほしいなんて思ってないよ♡♡ きみのそういうつんつんしちゃうところもかわいくて好きなんだってば♡♡ ……さっきのは、ほら。俺の言葉のチョイスも悪かったし。ね?♡」

「ううん! 君は全然悪くなくて……!」
 
「……そうだなぁ♡ 違ってたらごめんだけど、俺のお姫様は、なにかがあるんじゃない?♡♡ たとえば、そうだなぁ……♡ とか?♡♡」

 わたしの否定に被せるように言った彼は、顔の前で手を合わせ、そのまま軽く組んだ。
 
 そんなことを言われたら、が確信を帯びてしまうのは自明で――――。
 
「えぇっ!? の移動…………!? それって…………♡♡」

 組まれた指の一本に、自然と目が行ってしまう。まだそこは空席だ。いつかその指に、お揃いの指輪を嵌める日が来たらいいのに――――。

「そんな驚くこと?♡♡ でしょ♡♡」 

  首を傾げた彼の流し目に、心の奥底まで暴かれてしまいそう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

処理中です...