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Interlude
Interlude<XXX>
しおりを挟む「…………君、いつもそう言ってない?♡ 自信作じゃないときなんてあったかなぁ?♡」
ハンドルを持ち上げたら、馥郁とした香りがいっそう強くなった。
彼のお気に入りの茶葉に、いつも使っている牛乳の香りが渾然一体となって――――。その奥にもうひとつ、なにか別の甘さが潜んでいる。今日の隠し味はなんだろう?
「思い出せる限りは一回もないね♡♡ 自信作だよ、毎回♡ 大好きなきみに飲んでもらうんだもん。中途半端なものは出せないよ」
彼は香りを楽しむわたしを急かしはしない。けれど、自信作の一杯を早く飲んでほしそうに、期待に満ちた目で手元の動きを注視している。
「きみはコッテコテの甘党だけど、たくさんのお砂糖で舌がお馬鹿さんになってるなんてこともなくて、特に大好物には『これでもか!』ってくらいこだわるもんね。きみに満足してもらえるミルクティーに辿り着くまでに、二ヶ月はかかったもんなぁ……」
長かった日々を振り返っているのだろう。
彼は目を閉じたけれど、チャームポイントのひとつである大きな瞳の威力が存分に発揮されていない状態でも可愛さが損なわれないなんて、羨ましい限りだ。
「ごめんね?」
忙しい合間を縫って二ヶ月でわたし好みの味に辿り着いた彼――――というか、彼の執念は尋常でなくすごいと思う。
「ううん。俺が勝手に挑戦しただけだし!」
そわそわと脚を組み替える彼をもう少しだけ見ていたい気もしたけれど、せっかくおいしく淹れてくれたのだから、冷めないうちに味わいたい。
「いただきます」
目に優しい色合いの液体を少量口に含んだ。
「……今日はメープルシロップがちょっと入ってる?♡♡」
「大正解♡ フロランタンがあるから、合うんじゃないかと思ってそれにしたんだ♡♡ ナッツとメープルの組み合わせは王道でしょ♡♡」
彼はテーブルの上にずらりと並んだお皿のうちのひとつを両手で持ち上げた。わたしもよく手に取ってしまう、お馴染みのお城の絵皿だけれど――――。
「ちょっと余白多めだね?♡」
そのお皿を使わせてもらうことが多い最大の理由は、サイズがちょうどいいことだ。
彼はいつも余分にお菓子を用意しておいてくれるし、わたしが用意するときも大体張り切って作りすぎたり買い込みすぎたりしている。
早い話、お城の描かれているお皿は直径が大きいのだ。お菓子の乗っていない部分からは当然絵が見えるので、そういう使い方もありなのかもしれない。
「きみも思った?♡ いろんなお菓子をちょっとずつ出してるから、他の一緒に乗っけてもよさそうだったんだけど、フロランタンってなんか煉瓦みたいだし、城壁っぽくてかわいくなるんじゃないかなぁと思って♡♡」
勝手に納得しているところに、彼の解説が添えられた。
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