三千世界の鴉なんて殺さなくても、我々は朝を迎えられる

片喰 一歌

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Interlude

Interlude<XXVIII>

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 時間は少し飛び、その日の放課後。彼の家にて。わたしたちは勉強会を早めに切り上げ、ダイニングテーブルについていた。

「さて。どこからでも話していいよ!」

 テーブルの上は、『これ、ただのティーブレイクだよね?』と思ってしまうほど豪華だ。

「どうしたの? 話まとまらないかな? いいよ、ゆっくりで」
 
(…………今日って、なにかの記念日とかじゃないなんでもない日だったよね? 相談に乗ってくれるだけの予定……で本当に合ってる? わたしより彼のほうがマメだし、否定しきれないのがなんとも……!)
  
 いつもなら途中で一度休憩を挟むけれど、今日はずっと勉強に打ち込んでいたので疲労がすごくて、彼の言っていることを理解するまでに少々時間を要した。
 
「ちなみに……♡ じゃーん♡♡ きみの好きなお菓子だけ集めてみたんだけど、気に入ってもらえた?♡♡  ……あ、話より先に食べたいかな?♡ そうだよねぇ♡ さっきまでめちゃくちゃ頑張ってたもんね♡♡ 気が利かなくてごめん。食べさせてあげよっか♡♡」

 彼は両手を広げてテーブルの上に注目を集めてから、どのお菓子より甘い提案を持ち掛けてきた。

「食べ……っ!? う、ううん!! 君だって頑張ってたし疲れてるでしょ? 今日はわたし、テーブルセットも手伝ってないし…………」

 キッチンでそれぞれが作業する時間も、そのあとのティーブレイクと同じくらい好きで、疲れの大半はその時間に吹き飛んでしまう。
 
 その時間がないというのは少しだけ不服だったし、とても変な感じがした。

「……あ、そっか! きみ、一緒にお茶の用意するの好きって言ってくれてたもんね。だから、ご機嫌斜めなのかな。今日はサプライズしたくて俺ひとりで用意しちゃったけど、次からはまた一緒に用意しようね♡♡」

 彼はわたしの様子から素早くそれを見抜き、ティーカップに口をつけた。今日も彼のほうの紅茶はストレートかつ無糖だ。

「ありがとう。でも、そうじゃなくて……!!」 

 わたしの前に置かれたティーカップから、ミルクティーの甘い甘い香りが立ちのぼってきた。
 
「さっきの質問の答え? 頑張ったとは思うし、疲れてたはずなんだけど、きみといるだけで勝手に疲れ飛んでくんだよね♡♡ ほんとは帰したくないもん♡ ずっとここにいてくれないかなぁって思ってるよ♡」 
  
「わたしは君の充電器じゃないんだけどなぁ♡♡」

「わかってるって♡ …………でさ。いまの俺、充電満タンだから、すっごく冴えてるんじゃないかと思うんだよ。話すなら、いまのうちじゃない?」 

 彼は両肘をついて手を組んだ上に顎を乗せた。
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