三千世界の鴉なんて殺さなくても、我々は朝を迎えられる

片喰 一歌

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Interlude

Interlude<XXVI>

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「俺たちがボタンひとつ外さないでハグしただけだとしても、ここにいるところを見られただけで誤解されるリスクはあるし、あんまりよろしくないイメージがついちゃいそうだなぁと思って。俺自身の評判はどこまで落ちようが構わないけど、きみを悪く思われるのは絶対の絶対に阻止しないとね!!」

 話は続いていた。拳を握って意気込む姿も含め、正義漢そのものだというのに、彼は自身の身を少しも顧みていないらしかった。

「えぇ……? わたしは君が『不良生徒会長』とか『エセ王子様』とか思われるほうが嫌なんだけどなぁ…………」

「あはは♡ 俺自身はその響き、面白くていいと思うけど♡♡ そういう言いがかりつけてくる人はどこにでもいるしさ、いちいち気にしてたらキリないよ?」

 じとっと見つめたら、彼は唇に挟まってしまっていた髪の毛をどけてくれた。

「全然面白くないし、なんにもよくないよ……!」
 
「でも、きみが嫌なんだったら、俺も完全無欠パーフェクト清廉潔白クリーンなイメージを死守しないといけないな♡♡ 気に掛けてくれて、ありがとね♡」 

「よかったぁ……。まだ続きあったんだ……。お願いだから、自分の評判も少しは気にしてね?」
 
 祈りを込めて、視界の外で指を折り畳んだ。
 
「そうだね。気にしておくよ。俺によくないイメージがついたら、俺と付き合ってるきみも悪い子だって誤解されちゃうもんね。……大事にする、きみの評判の次に」

「思ってた感じとだいぶ違うけど、それならまぁいいかな…………?」
 
「いいってことにしておいて♡」

 人差し指の腹で唇に触れられる。ほんの少しだけれど、指紋の感触がわかった気がした。

「ちゅーの代わり?♡」 

「そう♡♡ 放課後、俺んち帰ってから、しようね♡♡ さっきあんなこと言っちゃったからには、ここでキスするわけにもいかないし」

 口を窄めて指の腹にキスを返したら、彼は満足そうに左の口端を吊り上げた。

 最近気付いたけれど、彼はたまに、限りなくシンメトリーに近く見える美貌を崩してアシンメトリーな表情を作ることがあった。
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