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Interlude
Interlude<XXV>
しおりを挟む「人通りがほとんどない……っていっても、まったくないわけじゃない。おまけに、俺たちは生徒会長と書記だ。学園中のみんなは俺たちのプライベートでの関係も知ってるけど、きみと俺が体育館の裏にふたりっきりっていうのは、なんかその……アウトローすぎてイメージにそぐわないというか、なんというか」
彼はゆっくりと身体を離したけれど、手は引っ込めず、わたしの腕に触れたまま。名残惜しむような仕草が嬉しかった。
「確かに。体育館裏って、果たし状とかで呼び出される場所のイメージ強いよね? よくて告白とかかなぁ?」
舞い降りようとする幸福な眠気を追い払おうと、瞼に力を込めてまばたきしたけれど、効果のほどはいかほどだったのだろう。
「きみって…………本っ当にピュアだよねぇ…………」
腕に置かれた手が、円を描くようにわたしの腕を撫でた。どことなくいやらしさを感じる手つきだ。
「ピュア?」
過剰にまばたきを繰り返していたせいで、キスをせっついていると勘違いさせてしまったのかと思ったけれど――――。
「高校生なんてヤりたい盛りだよ? 俺たちはそうじゃないしイメージ湧きにくいかもだけど、大体の生徒は自宅に帰っても親きょうだいの誰かしらがいることも多いだろうし、ラブホテルも利用できない」
彼は文章題の解き方を解説してくれるときと同じく、答えを導くのに必要な要素のみを抽出し、それらを順序立てて並べていった。
「フラストレーションの溜まったお猿さんたちにとっては、人気のない場所はどこだって恰好の逢瀬の場なんだよ?」
「!」
彼の口から語られているのは、紛れもない真実で、そこにはなんの脚色もないのだろう。
しかし、わたしたちがそういった話題について話したことはいままで一度もなく、また、彼が猥談をしている場面に遭遇したこともなかった。
(彼でも『ヤる』とか言うんだ……!? 意外だけど、それが逆にいいかも♡ どきどきしちゃった♡ しっかりしてるし大人みたいだけど、同い年の男の子なんだなぁ……♡♡)
「…………しかも、そういう頭の足りないお馬鹿さんたちに限って、他の大多数の人たちも自分たちと同レベルかそれ以下のお馬鹿さんだと思い込む。そうなったら、厄介だと思わない?」
ぽーっとしているわたしを尻目に、彼は持論を展開し終えた。
「『もし誰かに見られたら、わたしたちがえっちなことするためにここにきたって勘違いされちゃうかもだから、早いとこ移動したほうがいいと思う』……みたいなことを言ったんだと思うけど、君の言い方ってすごくかっこいいし、品がいいよね。吟遊詩人みたい♡ 聞き惚れちゃった!」
「言い回し?♡ ありがとう♡♡ きみの琴線に触れる表現ができたなら、なによりだね♡ 本物の吟遊詩人はもっとかっこいいと思うけど、言いたいことは大体そんな感じ!」
薄く笑んでいるものの、注意深く周囲に気を配っているのは視線を追えばわかる。付き合う前から兆候は見られていたけれど、どうやら彼は並外れて心配性らしかった。
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