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Interlude
Interlude<XXIII>
しおりを挟む「…………話すのは別にいいけど……。君のこと困らせたり、嫌な思いさせたりしそうなのは、ちょっと嫌……かも……」
始業前の空き教室よりも誰かに聞かれる危険性が低いと踏んで連れてきてくれたのだろう。思いやりに溢れた彼に、いま以上の迷惑や心配を掛けたくない。そう思うのに――――。
「こんなときまで俺の心配なんてしないでいいんだよ。俺がいちばん嫌なのは、きみがひとりで……俺の知らないところで泣いたり悩んだりしてることなんだから…………」
わたしの気持ちとは裏腹に、彼は迷惑も心配も掛けてほしいと言い、制服に皺が寄ってしまいそうなほど強く抱き締めてきた。
「……体育館の裏まできたのは、滅多に誰もこなくて話がしやすいと思ったから? それとも、ぎゅーってするため……?」
「どっちだろう?♡ 両方かな?♡♡ ぎゅーってしたのは、きみに安心してほしかっただけじゃなくて、ただ単に俺が充電したかったからでもあるけど♡♡」
「ほんと?♡ 嬉しい……♡ 朝からこんな幸せでいいのかなぁ♡ 今日の授業集中できなかったら、放課後勉強見てね?♡♡」
「いつもの勉強会とは別に、今日の内容を見てほしいってこと?♡ それは構わないけど……♡♡ どうかな? 話したくないんだったら、この話題はここまでで終わりにするけど」
「……ううん。いまのわたしも昔のわたしも大切にしてくれる君に助けてほしい……」
自分ひとりで癒すことのできなかった傷も、彼の力を借りれば、徐々に癒えていくかもしれない。
「もちろん。どの程度力になれるかわからないけど、全力を尽くすよ」
震える身体を誤魔化すように擦り寄った。
(…………っていってもなぁ……。どこまでだったら話していいんだろう? 彼は本当に全部知りたがってるんだとは思うけど、だからって、聞いたあと嫌な気持ちにならないわけじゃないと思うし……。そもそも、わたしはどこまでだったら話せそう? 話していいと思える?)
「話せるところだけ、話したいところだけでいいんだよ? 出会う前のきみになにがあったかに興味がないわけじゃないけど、話すためには、そのときのことを詳しく思い出さなくちゃならないよね。でも、思い出したくもないこともたくさんあるだろうから……。……本当に、無理はしないで?」
その言葉で、いままでぼんやり感じていた気持ちがはっきりと輪郭を持った。
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