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Interlude
Interlude<Ⅶ>
しおりを挟む「クリスマス……かぁ…………」
見られながらは正直食べにくい。
けれど、彼はわたしの食事シーンを見るのが好きと言うし、わたしも彼の食事するところを凝視していた手前、あまり見ないでとは言えなかった。
「きみのほうは、あんまりしっかり祝ったことないって言ってたっけ」
「うん。……しかも、どっちかでいったら、恋人とふたりで……じゃなくて、家族で過ごすものなんじゃないかなぁって思ってるけど、それはそれでぴんときてなくて…………」
わたしのクリスマスに対するイメージは、子どもの頃に読んだ絵本に影響を受けているのではないかと思う。
(クリスマスシーズンにかかる曲とかお店の飾り付けとか、そういうのは好き。限定スイーツも。だけど、家族と過ごすべきものって思うと、やっぱりあんまり好きになれないし、少なくともわたしのためのイベントじゃない気がする……。幸せな恋人たちが主役で、わたしは背景みたいな…………)
クリスマスシーズンが近付いて焦る女の子たちの話を聞いても、クリスマスイブ・クリスマス両日に街を歩く恋人たちとすれ違っても、やはり恋人と過ごすイメージは湧いてこなかった。
(毎年、お父さんもお母さんもいつもより帰り遅いくらいで、小さい頃は暖房の付け方もわからなくて、寒いなか凍えて待ってたこともあった……。プレゼントは手渡しで、『サンタさんなんていないんだ』って最初から知ってたし、ほんといい思い出ないなぁ……。いまは関係ないけどね)
いつまでも飲み込めないご飯は、噛みすぎたせいで変に甘い。
その甘さが思い出の苦味と対比になっているようで、ますます喉が締まっていったけれど、お茶でどうにか流し込んだ。
「でも、俺と過ごしてくれるんでしょ?♡♡ 『家族で過ごすイメージはまだあるけど、わたしは君と一緒に過ごしたい』って言ってくれたもんね?♡♡」
――――けれど、彼が教えてくれた。『誰と過ごすべきか』ではなく『誰と過ごしたいか』で決めていいのだと。
「うん……♡ 君と一緒にいたい……♡♡」
「嬉しいな♡♡ 最高のクリスマスにしようね♡ イルミネーション見に行くのも付き合ってくれる?♡♡」
彼はミニトマトをひとつ手に持っている。緑のヘタに赤い実。一年中いつでもお目にかかれる小さなクリスマスだ。
「いつ行くの?♡」
彼がミニトマトをそのまま口に運び、唇の上下で挟んでからヘタを取っているところを眺めながら尋ねた。
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