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Interlude
Interlude<Ⅵ>
しおりを挟む「空き教室にいた人たち……。みんな初々しい感じだったね」
お弁当の包みを広げ、ここに着くまでの道のりを振り返る。
「確かに。大体が下級生っぽかったし、ちょうど成立したてなのかな? 入学とクラス替えで四月に知り合って、だんだんお互いのことわかってきた時期だと思うし……。いま付き合えば、クリスマスまでに結構打ち解けられるだろうしね」
彼はすでにおにぎりを齧っていた。三角形のそれを支える指は整然と揃えられている。
すべきことが詰まっているときはおにぎり片手に資料を捲ったり、筆を走らせたりしている彼だけれど、締め切りの迫ったものがないときは、どんなに小さなものでも両手で持っていることが多い。ちょうどいまのように。
「…………クリスマスって、そんなに大事かなぁ?」
「やっぱりカップルには大事なイベントなんじゃない? きみにはハロウィンのほうが本命かもだけど♡♡ ちゃんとお菓子用意しとくから、楽しみにしててよ♡♡」
彼の言葉に微笑んで頷く。
去年のハロウィンはまだ友達だったけれど、わたしが甘党なことを知っていたからか、彼はかわいくておいしいお菓子をたくさん用意していてくれた。
みんなに配る用だと思っていたので、とても驚いたのをよく覚えている。
「そうかも。かぼちゃにお芋に、栗まで……。おいしそうなお菓子がいっぱいあって目移りしちゃうし、あれもこれもって欲張りすぎて太っちゃいそう…………」
「その分、脳を酷使すればいいんじゃない?♡ 俺としては、きみはもう少しふっくらしてもかわいいと思うけど♡」
甘い卵焼きを頬張るわたしを見つめる視線は、いま咀嚼中の卵焼きはもちろん、ハロウィンやクリスマスのある秋冬に出回るスイーツより甘い。
「君は……クリスマスが好きって言ってたよね?」
口のなかになにもない状態になってから、さりげなく尋ねてみる。
「うん。俺は結構好きなほうだと思う。イルミネーションで街全体があったかい雰囲気になるし。毎年見に行ったりもしてたなぁ、ひとりで」
「ひとりで? そんなに好きなんだ?」
「うん。でも、今年はひとりじゃないから、もっと楽しみ♡♡」
おにぎりをひとつ完食した彼は、頬杖をついてこちらを眺めていた。
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