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彼と彼女の放課後
彼と彼女の放課後<XXXIII>
しおりを挟む「だけど、はじめてのお泊まりデートの予定を立てる前に、溜まってきた写真を全部プリントしないと♡♡」
眠気が飛んでしまったのか、彼はわたしの膝でスマートフォンを操作している。
「あれ? こないだ印刷しなかった?」
わたしたちが優先すべきは試験勉強だし、仮眠を取らないなら続きをしたほうがいいのでは――――と思いつつ、答えてしまう。
「したけど、もういっぱいなの♡ これ以上溜めちゃうと、アルバムに入れるときに時間かかりすぎちゃうし、端末に空きもなくて……」
いやにベッドが弾むと思ったら、原因は彼の脚だった。両肘を立て、これまた両手でスマートフォンを持つ彼は、御機嫌に膝から下をぱたぱたと動かしていた。
「最近、すぐ容量ぱんぱんになっちゃうんだよね♡ 見てよ、このスクロールバー!」
スワイプさせながら見せてくれたスクロールバーは、目を凝らしてようやく視認できるほどの短さだった。お菓子にまぶすカラースプレーのほうがずっと長い。
「…………すごいね!? こんな短いのはじめて見たかも……。君、わたしの写真、撮りすぎなんじゃない?♡」
「そのとおりなんだけど、撮らないわけにはいかないの♡ ほんとは一緒にいるときはずーっと動画撮影してたいところを、妥協して写真にしてるくらいなんだから♡♡」
と言って画面にキスをした彼に驚いたけれど、そこには正面を向いたわたしが大きく映っていた。
「……それはわかったけど……。半目になってるのとか写りよくないのとかは消してね?」
「消して容量増えた分、新しいの撮らせてくれるなら♡♡」
にっこり弧を描いた唇に目を奪われる。
「容量ピンチなんじゃなかったの?♡ 消した意味なくなっちゃうよ?」
「なに言ってるの♡♡ 大アリだよ! 俺のコレクションが増える♡♡ 容量は……まぁ、こまめに消したりしてなんとかするって♡」
「…………ずるいなぁ。そんなこと言われたら断れない……♡♡ けど、本物にはしてくれないの……?♡」
自分の唇を指してねだると――――。
「ごめんね?」
起き上がった彼が近付いて、唇が重なって。
「……ふふ♡♡ 写真もいいけど、やっぱり本物のきみがいいなぁ……♡♡」
一旦離された唇がもう一度触れ、至近距離でばちっと視線が交差した。髪と同じ、明るい瞳に吸い込まれてしまいそう。
どんなに技術が発達しても、この美しさを写真なんかにおさめることはできないだろう。
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