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彼と彼女の放課後
彼と彼女の放課後<XXVIII>
しおりを挟む「ひとつだけ気になることがあるんだけど……」
控えめに挙手して、反応を窺った。
「んー?」
画面から舞い戻ってきた視線は、ぴりりと辛い。眠気が限界なだけだろうから、そこまで気にはならないけれど。
「結婚式で使う想定なのに、ベッドで並んで座ってる写真でいいの?」
「…………ああ! 事後みたいになっちゃうかな?♡ なんにもしてなくても、見る人が見たら、場所とか雰囲気とかから疑われちゃうかもって心配?♡」
彼はそういうことを気にしないタイプだ。匂わせる意図もない代わりに、隠そうという意思もない。
「まぁ、そんなにまじまじ見る人もいないとは思うけど……」
わかってはいても、彼とは正反対で、些細なことまでくよくよ考える取り越し苦労の多いタイプのわたしとしては、人目に触れる可能性のある写真からそういうことを連想させるのはなるべく避けたかった。
「……ちょっとごめんね? 上のボタンふたつ外すよ♡」
彼は少し考えたあと、まっすぐ首に手を伸ばしてきた。
「うん。…………って、えっ!?」
抗議含みの一声も虚しくリボンが緩められたかと思うと、音も立てずにいちばん上と上から二番目のボタンが外された。
いちばん上まで留めているのは首が詰まって息苦しいと日頃は思っているはずなのに、ふたつ開けた程度ですでに首元がすーすーして落ち着かないのは、なんだか不思議な感じだった。
「こんな感じかな?♡♡ …………じゃないや! 俺のほうがまだだった! ひとつ、ふたつ……。いや、みっつ開いてたほうが慌てて羽織った感じ出そうかな?」
コメントするために隣を見たら、想像していたよりも随分とかわいい彼がいた。
「…………ふふ♡♡ ボタン、一段ずつずれちゃってるよ?♡ 直してあげよっか?♡♡」
「え、気付かなかった! ……でも、いまじゃなくていいや! あとでお願い♡ ちゃんと留められてないほうが『それっぽい』と思うし♡♡ きみも見て見て♡ 画面のなかの俺たち、どんなふうに見える?♡♡」
まんまるの瞳で自分の状態を確認した彼だけれど、そのままどこも整えず、腰を抱いて身体をくっつけてきた。
「…………昨晩は……お楽しみでしたね…………って感じ……?」
ちゃっかり彼に体重を預けて、小声で呟く。仲睦まじく身体を寄せ合う胸元がはだけた男女は、わたしたちによく似た誰かのようだった。
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