23 / 187
彼と彼女の放課後
彼と彼女の放課後<XX>
しおりを挟む「俺の希望聞いてくれるの?♡♡」
彼は断りを入れ、箱を片付けてきてから、もう一度隣に掛けた。
「希望…………もそうだけど、わたしに合わせて無理してないかなぁ……って思ったから……」
ぼんやりしていたわたしはマットレスが沈むのに耐えられず、彼の膝に倒れ込んでしまったけれど、嬉しそうな顔で抱き寄せられたせいで身動きが取れない。なんて幸せな悩みなんだろう。
「無理?」
「本当はまだするつもりなかったんじゃない?」
ヘッドボードまで追いやられた箱は、そこでわたしたちの会話を聞いているみたい。わざわざそこまで遠ざけなくても、ベッドの上に置いておけばよかったのに。
綺麗好きな彼のことだから、雑然とした状態は好まないというだけで、特に深い意味もない行動だったのかもしれないけれど、他にも理由がありそうな気がした。
「どうしてそう思ったの?」
「結婚の話はするのに、こういうことはいままで全然話題に出さなかったから。……結婚前に相性を確かめておくのも、いまの時代は普通でしょ? でも、君は周りに流されるようなひとじゃないし…………。もしかしたら『少なくとも卒業までは待とう』とか『結婚まで手出さないのが理想』とか考えてたんじゃないかなぁって……」
大きな目がこぼれ落ちてしまいそうなほどに見開かれても、わたしの言葉は止まらない。
わがままな自覚はあるけれど、あなたの信念を曲げてまで、わたしの望みを叶えることが正しいなんて思えるほど、ふてぶてしくはなれなかったから。
「全部のことに対して、ちゃんと自分の意見とか基準とか持ってるひとだからそうじゃないかと思ったんだけど、わかったような口きいてごめんね」
「『わかったような口』なんかじゃないよ。…………きみは、誰よりも俺のことわかってくれてるんだね。ありがとう」
謝罪で締め括ろうとしたけれど、感謝されて面食らう。どこまでお人好しなんだろう、君は。
「結論から言うと、きみの言ったとおりだよ。卒業までは待とうと思ってたし、結婚してからでも遅くないんじゃないかなって思ってた。……まぁ、俺が我慢できるかは別としてね?」
「いまも我慢してる?」
左耳に甘い声が吹き込まれ、身体を捻って彼のほうを向いた。
「そりゃあ、もう。……でも、試験まであと少しだし、さすがにこのタイミングでするわけにいかないでしょ。…………それにさ…………」
紅茶の香りが広がった。そう認識したときにはすでに唇が触れ合っていた。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説


ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる