三千世界の鴉なんて殺さなくても、我々は朝を迎えられる

片喰 一歌

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彼と彼女の放課後

彼と彼女の放課後<Ⅱ>

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(言い方を変えてみたらいいのかな? 『そろそろ次のステップに行きたい』とか? ……遠回しでわかりにくいかなあ。それだったら、はっきり伝えて引かれたほうがまだいい……?)

 上に乗っているお皿を何枚かどけて、今日使わせてもらうフリルプレートを出した。

 どのお皿も本当に趣味がよくて、眺めているだけで満たされる。

 満たされると言っておきながら、頭のなかは現状への不満でいっぱいだなんて、『かたはらいたし』とはこういうことをいうのかもしれない。

(…………やっぱりやだ。無理。言えない。はしたない女だと思われたくないもん。彼に限ってそんなことないと思うけど……!)
 
 お皿の上にレースペーパーを乗せて、その上にクッキーを綺麗に並べたら完成だ。

(……そういえば、この前レースたっぷりのかわいい下着買ったけど、気に入ってくれるかな? わたしはひと目惚れしちゃったんだけど……って、レースペーパー見てこんなこと考えるとか、わたしって本当はものすごくえっちな子なのかも……!?)

 問題のレースペーパーを隠すようにクッキーを並べていったけれど、服の下に潜り込んできた彼の手によって下着を脱がされる妄想から逃れることはできなかった。

(下着の脱がし方になんてバリエーションもなにも…………いや、わりとありそうな気がしてきた……。わたしは使ったことないけど、前が開くタイプのブラもあるし、そもそも『脱がす』じゃなくて『引きちぎる』感じの人もいるもんね。……思い出さなくていいことまで思い出しちゃった……)

 考え事をしながらだったけれど、作業自体は量のわりには早く終わったから、飲み物を用意してくれている彼の様子を見学することにした。

「……あ、きたきた♡ そっちはもう終わった?♡♡」

 彼は近付いたわたしにいち早く気付き、笑顔を見せてくれた。

(好き……♡♡ 彼は準備のあいだもきっと、さっきまでの内容とか復習してたんだろうなぁ。…………それに引き替え、わたしは…………)

 制服を汚さないようにエプロンをつけた彼は、性的な欲望とはかけ離れた清潔でさわやかな印象だったものだから、先ほどまではなんともなかったのに、いまになって羞恥心が込み上げてきた。

「う、うん♡♡ クッキーいっぱいあったから、おっきいお皿貸してもらったよ」

「了解♡ お菓子の用意、ありがとね♡」

「どういたしまして♡ 君も飲み物の用意してくれてありがとう♡ わたしもここで見てていい?♡♡」 

「もちろん♡ きみはお砂糖たっぷりで甘~いのが好きなんだよね♡」

 慣れた手つきでミルクパンを火にかける彼が寄越した視線は、わたしの焼いてきたクッキーより、彼がおすすめの茶葉で淹れてくれるミルクティーよりもずっとずっと甘くて、脳髄が幸福に蕩けてしまいそう。
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