カラメリゼの恋慕

片喰 一歌

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相対的な狭さ

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「ん……♡」
 
 同じ場所に付着した二種類の液体を判別するのは困難を極める――というか、多かれ少なかれ混ざり合ってしまって無理だろう――が、外側に近い部分は恐らく私の愛液、内側のほうが彼の精液だ。

 性器そのものでなく、そのモノの纏ういやらしい液体のみを舐めとっていく。それは、アイスクリームの表面を舌で溶かし、少しずつ隠された甘味を露わにしていく過程と酷似していた。

「…………♡」

 彼は終始無言だったが、上目遣いで見た顔は恍惚に蕩けていた。

「残ってるの、出しちゃうね♡♡」

 全体を綺麗にしたあと、えずく寸前のところまで咥えて吸い上げる。咥内の残滓はすべて飲み干した。
 
「…………ありがとよ♡」 

 私の喉が上下したのを見て、彼の喉も同じように動いた。

「前は終わったから、後ろ向いて」

 そのあと、彼は羞恥心から無愛想になってしまう私を強引に立たせ、キスをした。

「っ♡♡」
 
 独特の風味のする体液を舐め取ったばかりのそこに、躊躇う素振りも見せずに舌まで挿し込んできたのには驚きを禁じ得なかったが、そういうことを気にしないのもらしいと言えばらしかった。

「応よ」

 自宅のバスルームは一人で入るには贅沢だと感じる程度には広いはずだが、身体の大きい彼と二人で入ると、途端にスケールダウンして見える。

 セミダブルのベッドもそうだし、リビングルームそれ自体もそうだが――先ほど彼と抱き合った――ソファだってそうだ。

 元から狭いのが好きというわけではなく、彼と一緒にいることで発生するうまれる相対的な狭さが私は好きなのだ。

「…………考えてたんだけど」

 シャワーのレバーを引き、ぽつりと呟く。

 思っていたより手前に倒してしまったせいで、結構な水量が襲い掛かってくる。急なスコールに見舞われたときのようだ。

「ん?」

 彼が振り返ることもなく返事をしたから、背中から声が聞こえたみたいで少し愉快な気分になった。

「私も生やそうかな、翼」
 
 張り切って泡立てすぎたはずの泡は、私がお掃除フェラをしているあいだにも、大部分が消え去っていた。

「……世界に羽搏いていけそうなやつ」

 背中を流している最中なのに、気付けば私は泡の下から出現した天使とも悪魔ともつかない翼を抱くそこに抱き着いていた。
 
 フックにかけたままのシャワーに打たれる絵面は少しだけ滝行に似ているが、煩悩塗れの私たちと修行はどうあがいても結び付かないだろう。
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