カラメリゼの恋慕

片喰 一歌

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貴方のターン、私のターン

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 立て続けにイかされたあと、ぐったりする私を彼は丁寧に洗い――そこでもまた二度か三度イかされた――、私が彼を洗う番になって、やっとバスルームを見渡す余裕が出てきた。

「シャワーなんて浴び放題でしょ? なのに、そのまま来てくれたんだね……」 

 真っ暗闇の中、抱き着いて真っ先に感じた汗の臭いがそのことを告げていた。

 彼の所属するサーカス団は、一般的に『サーカス』と言われて多くの人が思い浮かべるようなテントでの営業を行っていない。

 外観は雑居ビル、内装はホテルのような建物で行われているのは、疲れた大人のための個別サービス。以前は誰もがイメージする通りのサーカスをしていたとは聞くが、それがどのくらい前のことなのかはわからない。

 彼の仕事は、街中や駅前で癒しを必要としていそうな大人をサーカスまで案内することや、集まった客に向けて説明をすること。

 それから、彼らの希望を聞いて諸々の調整をし、簡単な手品を見せたり漫談をしたりして待ち時間を持たせること。場合によっては、ドリンクを出すのまで彼がすることもあるのだとか。

 どう考えても彼の負担は大きすぎると思うが、給料は相当いいらしいし、上のほうの階に与えられているという個室の住み心地を自慢されたこともある。

 自慢というよりはプレゼンで、もっと言えばそこから同棲しないかというのが本題だったし、かなり魅力的で断りづらい誘いだったことは言うまでもないだろう。

 ――――『そんな建物があるということは、そこが拠点のはずだ。ずっと同じ場所で興行しているのに、二年も会えないのはおかしい』?
 
 まさか、『サーカス』を謳っておきながら、そんなはずはない。
 
 彼らは間違いなく世界中で興行を行っている。今回はたまたま日本に来たというだけだ。数日後にはもう発ってしまうが、今回は通常の休暇とは別に彼には休暇が与えられていると言うのだから、文句は言うまい。
 
 なんでも団長は魔法使いで、団長の手にかかれば、雑居ビルを圧縮して持ち運ぶことくらいは造作もない――――ということらしい。

「早く会いたかったからなァ」

 太い首に残る汗の香りが愛を確かめ合う行為へと搔き立てたが、彼の身体を洗っている最中だ。無心になって石鹸を泡立てた。

「…………お前さん。もうそのぐらいでいいんじゃねェか?」 

「あ」

 手元を見ると、手の何倍もの泡の塊が出来ていた。

「……最近まで日差しきついとこにいたみたいだから、最大限摩擦を減らしてあげたいと思って」

「そうかい♡♡ そいつはどうも♡ 隅々まで頼むぜ?」 

 苦し紛れの言い訳を聞いた彼が指したのは、赤黒くグロテスクな男性器だった。
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