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HONEY BUNNY
HONEY BUNNY<CDXLIV>
しおりを挟む「…………だから、『死にたい』なんて悲しいこと……考えちゃうことはあるかもしれないけど、もう二度と言わないで……」
背中に回った手は、わかりにくいけれど細かく震えていた。
まったく順接の体をなさない一連の訴えは、かえってその切実さを際立たせてすらいる。
「…………じゃなくて。もう二度ときみがそんなふうに追い詰められなくて済むように、俺も頑張るから……。命の続く限り、一緒に生きていこう。これからも」
いまにも泣き出しそうな彼につられたのか、これ以上ないほどに整った顔が、水面に浮かぶマーブル模様のようにぐにゃりと歪んだ。
「うん……。あなたのこと、たくさん苦しませて、困らせて……本当にごめんね…………」
昨日今日に限った話ではない。
プレゼントが決まらないことで困らせたかと思えば、今度は不確かすぎる約束を結べと駄々をこねて、本当にどうしようもない大人――――いや、当分は子どもの面倒なんて見られないであろうほどに、わたしは幼稚だ。
「きみのことで困ったことなんてないよ、俺は。全部隠されてたときのほうがずっと苦しかったし、悲しかったから……話してくれて、ほっとした」
嚙み締めるように呟く彼は、痛いほどにきつく抱き締めてくる。
骨が軋み、内臓が圧迫される感覚が、放置されていた全身の熱を呼び起こしていった。
「…………さて。もう他に話してないことはない? あったら、いまのうちに言っておいてね。ここから先は、おしゃべりを楽しんでる余裕なんてあげないから……♡♡」
「ないよ? ……だから、続き……始めよ?♡♡ 」
「時間は有限だからね。今夜はあと何回心中しようか? 愛しのきみ……」
彼は先ほどの問答に引っ掛けて、わたしの意向を尋ねてきた。
――――答えなんて、ひとつしかない。
「朝が来るまで、何度でも。愛しいあなた…………」
わたしの返答を合図に、彼が身体を起こし、あれよあれよという間に寝台の上に横たえられた。
いつもと同じ景色のはずが、先ほどまで見下ろしていた彼に見下ろされていると思うと、ときめきが、愛しさが、とめどなく溢れて。
どきどきする胸を抑えたら、恥じらった様子に見えたのか、手首をごく優しく掴まれた。
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