我々はうさぎではないので、乙女座の我が子にはまだ巡り逢えない

片喰 一歌

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HONEY BUNNY

HONEY BUNNY<CDXLI>

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「この先、、俺のいちばん大切なひとは、ずっときみ。きみしかいないって確信してるおもってる……」

 そこで言葉を切った彼は、頬の丸みに沿うように手を添えた。

 その仕草は、いついかなるときもわたしの意思を尊重してくれる彼のスタンスそのもので、胸があたたかくなって、それから苦しさが増したけれど。

「えっと……♡ ちょっと待って?♡ いま『家族が何人に増えたって』って言ったよね?♡♡ あなた、何人子ども作る気でいるの?♡♡」

 この耳は、無視できない文言を拾っていた。

「え?♡ 十人くらいかな?♡♡ きみも俺も体力自慢だし、できないなんてことはないと思うんだけど……♡♡ どう?♡」

 すすす……と移動してきた手が、腰回りをいやらしく撫で回している。
 
「どうって言われても…………♡♡ 『そのくらい、たくさん抱いてくれる』ってことだって思っていいんだよね……?♡」

「そう思ってくれていいよ♡♡ 本当に十人なんて作ったら、俺がきみを独り占めできる時間がなくなるけど、きみが心の底からそれを望むときがきたら、俺はそれを全力で叶えるつもり…………」

 手触りのいい毛布にも負けない、あたたかで柔らかな声で呟いた彼の表情は、『切ない』や『儚い』といった形容がよく似合う。
 
 どこか自分に言い聞かせているような呟きと相俟って、とても寂しそうで放っておけない魅力に溢れていた。

「よかったぁ♡♡ 忘れちゃったのかと持って、びっくりしちゃった♡ わたしもあなたを独り占めできなくなっちゃうのは、困るなぁ……」

 愛すべき我が子だとしても、彼の腕に抱かれる場面を想像しただけで、嫉妬の炎がごうごうと燃え盛る。
 
 その炎は勢いを増して、胸の奥深く、あなたを想うと締め付けられる部分が、完全に焼け焦げてしまいそう。
 
 黒煙とともに立ち上ってきた幻臭を追い払いたくて、胸に頬を寄せては、深く、深く、息をした。
 
 吸って、吸って、吐いて、吸って――――。ああ。ようやく、あなたの香りに戻ったなった
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