我々はうさぎではないので、乙女座の我が子にはまだ巡り逢えない

HONEY BUNNY

HONEY BUNNY<CCCXII>

「ほんとうに嫌じゃない？♡ 積極的すぎて引いたり……付き合いきれなくなったりも、しない……？　ぜったいに？」

　くどいくらいに確認を重ねるのは、知らず知らず許容範囲を超えてしまうことを恐れているから。
　
「絶対大丈夫って保証するし、もしそれが原因で俺がきみから距離を置くようなことがあれば…………殺してくれたっていいからね？」

　軽い調子のその台詞は、鋭利な刃物のように突き刺さって。

「…………え、っと……。わたし、別にそこまでしようとは……」

　澄んだ瞳をはらはら見つめ、こわごわ返すと、元通りに和らいだ目元が作り出す色気にあてられる。
　
「ごめん、大袈裟すぎて驚かせちゃったか。『そんなこと、一生ないから安心してね』ってこと♡ きみのほうから舐めたり挿れたりしてきても引くとかないし、むしろ『もう待てない♡♡』って言われてるみたいで興奮する♡♡ ……というか、そうなってもらうために、俺はずっと頑張ってきたんだよ？♡」

　彼がほんの少し表情を変えただけで自分の心臓の音やその他もろもろに遮られてしまって、大好きな声がうまく聞き取れない。
　
「…………本当は、きみが乗り気じゃなくても毎晩かわいがりたかったのに死ぬ気で耐えて我慢して、わ・ざ・と・間・隔・空・け・て・、次・は・い・つ・か・な・っ・て・期・待・さ・せ・て・……♡」

　けれど、唇の動きを追っていれば、おおよその内容は把握できた。

　しかし、把握できているからといって、必ずしも理解が追いついているとは限らない。
　
「あぁ、回りくどすぎるかな♡♡ するかどうかもわからないのに、毎晩勝負下着着けて待ってるような子になっちゃったのは俺のせいだよ……って言ったほうがわかりやすかった？♡♡」

　なんの話が始まったのか問いかけたいのを堪え、涙と微笑を湛えたあなた好みのわたしを必死に保っていたはずが、やはりあまりうまくはできていなかったらしい。

「そのために、たくさんたくさん気持ちいいこと教えてきたからね……♡」

　説明することに集中しているからか、制止をかけても止まらなかった彼の動きが緩やかなものになっているのは救いだけれど。