上 下
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HONEY BUNNY

HONEY BUNNY<CCCI>

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「この流れで聞くのはずるいかもしれないけど、なるべく希望どおりにしたいから聞くね。上と下、どっちがいい?♡ このままがよければ別にそれでも…………」

 どす暗い情念がお腹の底に沈殿し、渦を巻いている。

 これまでに蓄積された劣等感や嫉妬心といった負の感情が寄せ集まったその渦は大きくなっていく一方かと思われた。

「……ああ、いや。もうちょっとしたら多少だろうから、やっぱり却下♡♡ 二択でよろしく♡」

 彼はこちらの事情など露知らず、弾んだ声で二択を放り投げてきた。

「っ、んぅっ♡♡」

 情念の溜まり場と化したはずのそこには継続して熱烈なキスが浴びせられ、すべては彼想うゆえの情欲へと置き換わっていった。

 自信過剰と見せかけて、心配事の絶えないひとだ。

「ねぇ、どっち?♡♡ いまのきみなら、呂律が回らないなんてこともないよね?♡」

 どうやら彼は、わたしが彼の元を去ることを恐れているらしい。

 制約なんてつけられていなくても、どこよりも居心地のいい腕の中から逃げ出すはずはないし、満腹感をおぼえるまでで満たしてくれる刀なんて死んでも手放せはしないのに。

「ほらほら♡ 早くしないと俺が決めちゃうよ?♡♡」

 優柔不断の悪癖が発動したと思っているのであろう彼が急き立てるけれど、答えなど問われた瞬間に決まっていた。

「……下♡ わたしが下で、あなたが上がいい……♡」

 そう、考えるまでもなかった。

 もし決められずに無言を貫いていたとしても、同じ結果になっていたと思う。

 だって、それこそがわたしたちの正しい序列愛のカタチだ。

 それがふたりのあいだの暗黙の了解だから。
 
「了解♡♡ しっかり掴まっててね♡」
 
 笑いとともに答えを口にしていたと気付いたのは、身体が後ろに倒されていく最中のことだった。

 たったいま心に浮かんだのとまったく同じ単語が自分の声ではなく最愛のひとの声で聞こえたのも、幻聴ではなかったようだ。
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