我々はうさぎではないので、乙女座の我が子にはまだ巡り逢えない

片喰 一歌

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HONEY BUNNY

HONEY BUNNY<CCLIII>

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「別にわざとしてるわけじゃないのに……♡」

 そう言ったあとで口元を覆い隠したのは、快楽に負けて反応してしまったという告白と同義だと気付いてしまったから。

「……そっか♡ 別にわざとでもよかったんだけどね♡」

「ほんとに我慢できなかったら、いつでもイっていいよ?♡♡」

「ありがと♡ でも、俺もこんな中途半端なところで出す気ないから、せいぜい耐えてみせるよ♡♡」

 彼は目視できるほど派手に上下している部分よりも下のほうに手根を当てた。
 
「あ……♡♡」

 結びつきは深くなってきてはいるものの、いまひとつ欲しいところに届かないもどかしさがより鮮明になり、官能をどこまでも加速させていく。

「本っ当に弱いなぁ……っ♡♡ あ、責めてるんじゃないよ?♡ かわいいなぁと思って♡♡」

 彼は、腰を反らして一刻も早く奥に迎え入れようとするわたしを見て微笑んだ。

 引き返そうとするでもなく、かといって求めに応じてくれるわけでもなさそうなので、諦めて引き下がったけれど。

 そのときに感じる部分に自ら引っ掛けてしまい、思いっきり下唇の裏を噛んで耐えた。

「……あなた、もしかしなくても『かわいい』って言っておけばなにしても許されるって思ってない?♡♡」
 
「えぇ?♡ そんなふうに思われてたんだ?♡ 心外だなぁ♡♡ かわいいかわいいうるさい自覚はあるけど、言おうと思って言ってるわけじゃないよ♡♡」
  
「馬鹿にしてるわけじゃないの……?」

 口元を楽にして、潤んだ瞳で彼を仰ぐと、慈愛に満ちた目を向けられる。

「違う違う♡ 弱点だらけなのも確かにかわいいけど、そうじゃなくて♡ なんだろうなぁ……。ちょっとこれは言葉にできないかも♡♡ たぶん『愛しい』ってこういう気持ちのことを言うんだろうなって感じ……♡」

 汗で束になっている髪を脇にどけてくれたあと、腰を抱えられ、臀部が浮いた。

「ああ……っ♡ 持ち上げちゃだめ…………♡♡」 

「……まぁ、いまの俺はあんまり優しくないから、『気持ちいいとなんにもできなくなっちゃってかわいいね♡』って意味だと思ってもらって構わないよ♡♡」

 めらめらと。ぎらぎらと。あれほど燃え盛っていたのにどこに行ってしまったのだろうと思っていた情欲は、瞳の奥に隠されていただけだったらしい。
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