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HONEY BUNNY

HONEY BUNNY<CXLIV>

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「そうだよ……。わたしにとっては『ずっと一緒』って、死んだあとも含めた永遠のことだもん。何度考えてみても死ぬまでじゃやっぱり嫌で、こればっかりはあなたに合わせるわけにはいかないの」

 その想いはいっそう強まっていた。

 救いようのないわがままな部分を無理に矯正するただすことを求めず、そのままのわたしをみとめてあいしてくれる彼の想いに報いるただひとつの方法は、信念を曲げず、叶う見込みの薄いこの願いを持ち続けることだ。

 甘い甘い蜜を思わせる声に溺れそうになりながら、涙声で頬擦りする。

「そっか。……じゃあ、もし『死んでからも一緒』って約束してくれる人が現れたら、きみは俺を捨てて、そいつと一緒になる?」

 彼は満足そうに頷いて、すらりとした首をくいっと右に傾ける。
 
 超重力の天体ブラックホールのように虚ろな瞳はしておらず、不穏な雰囲気も漂ってはいない。さしあたって危険はなさそうだ。
 
「いまさら意地悪言わないで? わたしがそんなことするはずないって、あなたなら知ってるでしょ?♡♡」

「まぁね?♡」

「独りは苦手だけど、そばにいてくれるなら誰でもいいなんて思えないよ。初めてだもん、こんなに離れるのがつらいと思えたひと。いまから死んだあとの心配なんてしても仕方ないのに、絶対無駄だって自分でもわかってるのに、そんな先のことを思って憂鬱になるくらい、あなたが好き。…………愛してるの。離れ離れになるなんて耐えられないって思えるのも、あなただからだよ……」

 本気度を測りたいがゆえの問いかけだったとしても、隣に彼のいない未来を想像して気が沈む。

「だったら、もっと聞き分け悪くていいんだよ。俺に縋って、俺が根負けするまで泣きついてよ。みっともないとかそういうごちゃごちゃしたことは一旦置いて。きみの気持ちはその程度? 『死んだらさよなら』でいい? そんな簡単に、きみは俺を諦められるの?」

 彼はわたしの肩を掴んだ。ぎりぎりと食い込む手から伝わってきたのは、焦燥感と苛立ち。

 普段のわたしたちや、わたしが常日頃からどれだけ彼に依存しているかを知らない人がこの台詞を聞けば、なんて自信過剰な男だと驚愕することだろう。

 けれど、問われるまでもなかった。

 独りでは、この命を役立てられつかえそうにない。誇張ではなく、詞的な表現でもない。わたしはあなたなしでは生きてはいけないの。

 きっ、と見据えて強い視線を跳ね返す。

「ううん、やだ。諦められないし、諦めるはずないでしょ。あんなにはっきり『死んだらなにもかも終わり』って……『その先なんてない』って言われたあとなのに、わたし、死んでもあなたのそばにいたいってまだ思ってるもん。これだって、譲るわけにはいかない大切な夢だから」 
 
 最大限濁してくれていたけれど、主旨は一貫して死んだあとに残るものはなにもない』ということなのだと鈍いわたしにも容易に理解できた。
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