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HONEY BUNNY
HONEY BUNNY<CXXI>
しおりを挟む「最初は結婚したときかなって思ったんだけど……」
自信のなさから自然と小声になる。
彼は無難な回答に『そうだね』とすんなり納得してくれるほど生易しい相手ではないし、わたし自身、そのとてつもなく大きいはずの区切りからふたりの関係性が決定的に変わったという実感はない。
「けど?」
彼は指輪をした手でわたしの指輪を弄び出した。くるくる回そうともがいているけれど、いまも昔もぴったりのそれは、そう簡単には動かない。
「付き合い始めたときになるんじゃないかなぁ」
「なるほど。ちょっと難しい質問だったかな。答えてくれてありがとう。よければ、そう思った理由も聞かせて?」
彼は外れるおそれのないほどぴったりと嵌まっている指輪に満足したのか、今度は長い腕でわたしを閉じ込めた。
「……勘違いだったら恥ずかしいんだけどね? 友達だったときから、あなたはわたしのことを他の子より気に掛けてくれてた気がするの。付き合い始めたら、それがもっとわかりやすくなったというか……。忙しくても時間作って一緒にいてくれようとしたり、心の準備ができるまでキスから先のことは待ってくれたりして、あなたの世界はわたし中心に回ってるんじゃないかなって自惚れちゃうくらいで」
当時のわたしは、性別を問わず誰からも好かれていた彼の時間の大半が彼女と過ごすのに使われていることに優越感をおぼえていた。
つまり、男女の関係になる前の時期は『彼はわたしのもの』といまより屈託なく思えていた……ということにもなるのかもしれない。それも不思議な話ではあるけれど。
「自惚れじゃなくて事実だよ、それは。……ひと目惚れだったんだ。頑張って友達ぶってたけどね。俺は出会ってからずっと、きみを中心にスケジュールを組み立ててる。だから、俺の意識としては『付き合う前からきみだけのもの』って感じかな♡♡ 重すぎる愛を持ったヤバい男だと思われちゃったかもしれないけど、ほんとだよ?♡♡ まぁ他にもいろいろ考えたら、付き合い始めた日なんだろうけどね。俺がきみのものになったのは」
彼が力いっぱい抱き締めてくるせいで、筋肉質な腕と少し出っ張った肋骨に挟まれた腕が痛い。
「苦しいよ♡♡」
こんな痛み、大したことはないけれど、これでは『わたしがあなたのもの』であることを思い知らされるだけだから。
「ああ、ごめんね♡♡ きみも俺のことぎゅーってする?♡」
「したい♡」
返事とほぼ同時に振り向いて、裸の胸に飛び込んだ。
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