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HONEY BUNNY
HONEY BUNNY<CXX>
しおりを挟む「……うん、知ってるよ。ごめんね」
「謝らなくていいのに♡ それでもまだ俺のこと独占し足りないってことは、それだけ本気で愛してくれてるってことなんだろうし♡♡ すごく嬉しいよ♡♡」
情けなくなってきて目を閉じると、彼は瞼の上にひとつずつキスを落としていった。
「俺だって独占し足りない気持ちはよくわかるし……。でも、どうして急に?」
「わたしも抱かれてるとき『あなたのものになれた』感じがするのが好きなんだけど、その逆で『あなたはわたしのもの』だって思えたことはないなぁって気付いて、ちょっと寂しくなっちゃって」
首に咲かせたキスマークに目を遣っても、いまは気休めにしか思えない。
「わたしがあなたのものになるのは簡単だけど、その逆は難しい気がしたの。『あなたはわたしだけのもの』だって自信が持てたらいいのになぁ。あなたはわたしを置いてどこかに行ったりしないし、他の人になんか見向きもしないって知ってるし……。こんなに愛してもらってるのに、これ以上どんな保証が欲しいんだろうね? 自分でもわからなくて困ってるの」
救いを求めるように、掴んだ腕をぐっと引いた。
「繰り返しになるけど、ずっと昔から俺はきみのものだよ?♡」
その声が、表情が、触れ合っている箇所から伝わる熱が、彼の本気度を物語っていた。
「確かにきみの言うとおりで、それを納得のいく形で証明するのは難しいとは思うけど」
しばらく無言で見つめ合ったあと、彼はわたしを抱き起こして座らせ、身体の下に敷きっぱなしだったバスローブを掛けてくれた。
その上から全身をすっぽり包み込まれても、まだこの心の隙間は埋まらない。
「『ずっと昔』って……いつ?」
普段なら素直に受け取っていたであろう不明瞭な答えが無性に鼻について、つい噛み付いてしまう。声に出てしまった苛立ち以上に、この胸は波立っていた。
「…………なら、逆に訊こうか。きみはいつだと思う? いつから俺がきみのものになったと思ってる?」
彼はわたしの左手に自分のそれを重ねて問う。
「えっ、と……」
質問に質問で返されることを想定していなかったわたしに答えの用意はできていなかった。第一、どう頑張っても『あなたがわたしのもの』だと思えないことに悩んでいるのだから、返答に窮してしまって当然なのだけれど。
「『あなたがわたしのものになったことなんか一度もない』だけは言いっこなしだよ。しつこいようだけど、俺のきみのものなんだから。そう思えるか思えないかは関係なくね。……だけど、そのことで悩んでるならなんとかしてあげたいから、どうしたらいいか考えるための材料が欲しいんだよ」
耳に極上の愛を受けながら、視界の端にはふたつ重なった指輪の輝きがちらついていた。
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