我々はうさぎではないので、乙女座の我が子にはまだ巡り逢えない

HONEY BUNNY

HONEY BUNNY<CXIX>

「…………っ♡♡」
　
「声出てないけど大丈夫？♡ 息できてる？」
　
　彼は全身で感じているわたしを見て喜びに浸りつつ、きちんと気遣ってくれている。にっこり笑って返事したくても、脚をがくがくさせて快感が落ち着くのを待つのが関の山。

「ん……♡」

　やっと出せたのは、声というよりはか細い音だった。彼の耳にも聞こえたかわからなくて、絡めた手を弱く握り返す。

「ほんっと素直でかわいいなぁ♡♡ すごく恥ずかしいのに、 俺が『見たい』って言ったからちゃんと見せてくれて♡」

「あなただけは特別だもん♡♡」
　
「ありがとう♡ こんなふうにさ……セックスしたら親密度が上がるだけじゃなくて、そのひととたくさんの秘密を共有することになるでしょ？♡ してるときも、したあとも♡ 回数を重ねれば重ねただけ、お互いのいろんな面が見えてくるし♡♡ 『きみと俺はお互いに数え切れないくらいの秘密を握ってる』とも言えるね♡♡」

　彼はわたしのツボをよく心得ている。かけがえのないただひとりだと熱っぽく説かれて、ときめかないわけがない。
　
　まだ少し重だるさは残っていたけれど、これも幸福の名残だ。できる範囲で『好き』と伝えたくて、腕を軽く掴んだ。
　
「だから、俺よりもきみのほうがよっぽど俺に詳しいんじゃないかな♡♡ というか、絶対よく知ってるよね♡♡ キスしてるときの顔もばっちり見られちゃってるみたいだし、他にもきみしか知らないことっていっぱいあるんだけど……。これでもまだ俺を独り占めしてることにはならない？♡♡ どんなときだって俺はきみだけのものだよ？♡♡」
　
　喋りどおしだった彼は、なんの前触れもなく唇を近付ける。
　
　舌を絡めて主導権を奪い合う情熱的なキスではなかったけれど、ふたつの唇が離れたあとも見えない糸で繋がれている気がした。

「言ってることはわかるけど、なんか誤魔化されてる気がする……」

　ぷくっと頬を膨らませて、疑惑のこもった眼差しを向ける。　

「誤魔化してなんかないさ♡♡ 俺はいつだって真剣だよ」

　彼ははにかんで、膨れた頬をぱくっと上下の唇で挟んだ。