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HONEY BUNNY
HONEY BUNNY<CII>
しおりを挟む薄く見えて厚く、筋肉の鎧を纏ったカラダはなかなか手強かった。疲労が蓄積し、柔軟性が低下している状態だということもあり、なかなか指が入っていかない。
体重をその一点に乗せるイメージで集中していると、声が掛かる。
「仕事は好きだけど、好きだから疲れないってわけでもないんだなって最近思うよ。あ、もう結構回復してきてはいるんだけどね?」
そうは言うけれど、彼の声にはまだまだ色濃い疲労が浮かんでいる。
「……そうだね。嫌いなことに比べたらだいぶ疲れにくいと思うけど、『好きだから』で無理しちゃ嫌だよ。他の人のこと頼ったり、納期に余裕がある案件まで急いで片付けようとしないで、休憩時間くらいはちゃんと休憩とってね?」
「確かに疲れてはいるけど、無理はしてないさ。でも、気に掛けてくれてありがとう♡ すごいね。きみには俺の仕事風景までわかっちゃうんだ♡」
注意したことに対する返事もそこそこに、変な部分に着目した彼にため息を吐く。本気で心配しているのに、わかってくれているのだろうか。
「あなたから電話がかかってくるの、大体おんなじ時間だから気付くよ。わたしへの連絡なんていいから、ゆっくりご飯食べたりして休憩になるような過ごし方して?」
彼から連絡が入るのを心待ちにしているのは事実だけれど、休憩時間くらいは自分自身のためだけに使ってほしい。そんな思いから、少しきつい言い方をしてしまう。
「…………電話、やっぱり迷惑かな? 鬱陶しい?」
ややあって話し出した彼の背中はいつもよりひと回り小さく、そして寂しげに見えた。
「ううん。わたしがあなたからの電話を迷惑とか鬱陶しいなんて思うはずないでしょ?♡ とっても嬉しいよ♡♡ あなたに身体壊してほしくないからって冷たいこと言っちゃってごめんね……」
互いに顔が見えない分、声に感情をめいっぱい乗せたつもりだけれど、果たしてどの程度伝わったのか。
「よかった♡ なら、これからも電話はかけさせてほしいな。きみの声聞くのがいちばんの疲労回復になるんだよ♡♡ 休憩っぽいことするよりもよっぽど効くし……。ね、お願い♡」
彼は両手を合わせて頼み込んできた。すでに勝利を確信しているであろう甘い声で。
「……わかった。わたしもあなたの声聞きたいし、すぐ出られるように待機しておくね♡♡」
身体を前に倒し、耳元で約束する。偉そうに説教したくせに、わたしにとっても彼からの定時連絡は離れているあいだの楽しみのひとつだった。
「ありがと♡♡」
彼の両手が次に作ってみせたのはハートマークだった。
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