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HONEY BUNNY
HONEY BUNNY<XXXI>
しおりを挟む「え?」
思いもよらぬ申し出にぽかんとしているわたしの様子を見て、彼はさらに言葉を続ける。
「いきなりごめんね。俺、ちょっと寒くなってきちゃってさ。カラダ冷やしちゃうのもよくないし、寒いと不安になってマイナス思考に引っ張られやすいし……。ひとまず一緒にあったまろう?」
「ええと……うん。そうだね?」
戸惑いながら肯定すれば、彼は一段と優しい声で付け加えた。
「……なんてのも口実で。いまからしてくれるのは大事な話だと思うから、ゆっくり聞きたいっていうのが主な理由かな。きみがしてくれる話は内容に関係なく、どれも大事だけどね」
考えてみれば、鏡の前で全裸で話し込んでいたのだから、多少なりとも身体は冷えている。切羽詰まった状況で寒さを感じる余裕もなかっただけだ。
「ありがとう。わたしもそれがいい。……そうしたい」
「決まりだね」
彼は温度表示に目を走らせたあと、手元で水圧の調整と水温の確認を済ませた。
「…………よし、こんな感じでいいかな」
「調節ありがとう。それ貸してもらってもいい?」
「もちろん。自分でかける?」
彼は持ち手をこちらに向けてシャワーを渡してくれた。ますます自分の気の回らなさに落ち込んでしまうけれど、せめて彼のためにできることをしたい。名誉挽回を目論んでいるのではなくて、ただ単純にそう思った。
「あとでかけるよ。とりあえず、先にあなたにちょっとでもあったまってもらおうと思って……。寒がってたの全然気付いてなくてごめんね? こんなの、なんのお詫びにもならないけど……」
くどくど言い訳を並べながら、美しい肉体を適温のお湯で流していく。
「ううん、気持ちだけでも十分すぎるくらい。もうかなりぽかぽかしてきた気がするし♡」
「……ふふ。いくらなんでも早すぎない?」
「あ、やっぱり気のせいかな? でも、きみが俺を想ってしてくれることはなんだって嬉しいし、あったかい気持ちになるんだよ」
「なんかわかるかも……。わたしが『寒い』って言ったら、あなたは暖房の温度上げる前に抱き締めてくれるもんね。体温であったまるより先に、優しさでほっこりしちゃう感じ」
と話しながら、わたしはベッドの上でした感情と身体感覚のリンクについての会話を思い出していた。
「それそれ。その感覚だよ。……あ、このくらいで大丈夫。ありがとね♡」
集中していると彼からストップがかかる。
「どういたしまして♡ わたしもすぐ行くから、先入ってて?」
「俺が流してあげるのに……」
「それはまたあとでお願いするね?♡ いまは先にあったまって、わたしのことあっためてほしいなぁ♡」
と言えば、不服そうだった顔がぱっと明るくなって、素直に湯船に浸かってくれた。
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