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HONEY BUNNY
HONEY BUNNY<XVIII>
しおりを挟む「わたしからでいいの?」
「いいのいいの。ふたりしかいないんだから、先でもあとでも大して変わらないって」
そう言って、ほとんど毎回先に洗ってくれるくせに。差し出された手を取って立ち上がった。そのはずみで内部から押し出されたものが脚を伝ったけれど、何事もなかったかのように笑顔を作る。
「……っ! ありがと♡ じゃあ、お願いするね♡」
お礼を言ってバスチェアに腰掛けた。いつもならこの時点で鼻歌まじりにブラッシングを始める彼だが、いっこうにブラシを手に取る気配はない。
黙って待っていると、先ほどまではしていなかった不思議な香りが漂ってきた。出所を探して浴槽を一瞥したけれど、数時間前から変化は見られない。ならば、とシャンプーラックに目を向ければ、案の定見慣れない容器があった。パッケージデザインはかわいらしいもので、カラーリングは濃いめ。彼の趣味とはかけ離れている気がする。
「いい子だね。さぁ、それじゃ大きく脚を開いて?」
頂き物かなにかだろうかと考えていると、彼はひときわ御機嫌な様子で大きなバスタオルを浴室の外に追い出しながら、とんでもない指示を出してきた。
「え? えっと…………こう?」
戸惑いつつ素直に従おうとするけれど、わたしの真正面には縦長の大きな鏡があった。少しくらい曇っていてくれてもよさそうなものだが、あいにくと曇り止めは仕事熱心だ。羞恥心が邪魔をして、あまり大きく股を広げられない。自分の裸体だって、できれば直視したくないのに。
「そうだねぇ。恥ずかしいのはわかるけど、それじゃまだ全然足りないなぁ。だって、ほら……。こんなにお行儀良く座ってちゃ、俺の身体もねじ込めない」
突如フレームインしてきた男性器に思わず悲鳴を上げてしまう。
「きゃっ♡」
「ああ、ごめんごめん。前隠してなかったね」
鏡とわたしのあいだに割って入った彼は、なんでもないことのように言ってのけた。
「だ、大丈夫。ちょっとびっくりしただけ」
わたしはというと、彼が目の前からどくことも局部を隠すこともないのをいいことに、ふたりが交わった証を生々しく残したソレに釘付けになってしまっていた。片手で足りないどころか二桁に届こうかというくらい愛されているというのに。
「そんなかわいい顔で見つめられたら、また勃ってきちゃいそう♡ そしたら、もちろん付き合ってくれるよね?♡♡」
降ってきた声に顔を上げれば、とろんとした瞳の彼がわたしを見下ろしていた。我慢しているのはわたしだけではなかったらしい。
「……当たり前でしょ♡♡」
「まぁでも、いまはそれよりこっちだね。もうちょっと頑張れる?♡ 思い切って開いてくれたほうが綺麗にしてあげられそうなんだけど、これ以上は難しいかな……。もし恥ずかしくて自分で開けないんだったら、手伝おうか?♡♡」
彼が跪いたので咄嗟に脚を閉じそうになったけれど、どうにか堪える。強制的に膝を割られるかと思ったが、挿入前を彷彿とさせる手つきでさわさわと柔らかい内腿をまさぐってくるだけだった。あくまでわたし自らの意思で脚を開いてほしいということだろう。嫌でもわかってしまう。それは『脚を開いて』のサインなのだと、さんざん教え込まれてきたから。
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