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HONEY BUNNY
HONEY BUNNY<XV>
しおりを挟む「起きた? ……いや、気のせいか」
ところで肝心の王子様だが、今回ばかりは少し鈍感だ。わたしは最初から眠ってなんかいないし、自分のことを姫だとは思えないけれど、あなたが何度も『お姫様』と呼びかけてくれるから、たまには眠り姫の真似事もいいかなぁ、なんて思ったの。わたしひとりの力で意識を浮上させるのは難しいから、力を借りたかったというのもある。
けれど、寝かせておいてくれようというのなら、あともう少しまどろんでいるのもいいかもしれない。彼の声が聴こえている限りは、半覚醒の宙ぶらりんな感覚もそこまで怖くはないから。
「寝込みを襲うなんてダメだよね……。でも、ちょっとキスするくらいなら許してくれるかな」
なんて言い出すから期待したけれど、施されたのは頭部……というよりほぼ髪を掠める程度の控えめな口付け。そんな紳士的すぎるキスでは、わたしを起こすに至れない。
「俺からしたら、きみはまだまだ『女の子』って感じなんだよなぁ……。性格が頼りないとか子どもっぽい見た目してるとかそういうことじゃなくて、なんていうか無垢でさ。すごいギャップだよ、ほんと。この寝顔見たって、誰もやることやったあとだとは思わないでしょ。まぁ首から下見ちゃったらあれだけど♡♡ ……って」
寂しい思いをさせてしまっているのではないかと申し訳なく思っていたけれど、彼のことだ。案外、この時間も楽しんでいたりして。その証拠に、繋いでいないほうの手はいたずらにそこらじゅうを這い回って、燻る熱を揺り起こしていく。起こしたいのか起こさないようにしてくれているのかわからない挙動に口元が綻びそうだ。
「……お風呂。そうだよ、お風呂のこと忘れてた。どうしようかな、おやすみ中のお姫様は。完全に一緒に入る流れだったし、とりあえず拭くだけ拭いておいて、起きてからにするか……? それとも、洗ってるうちに起きるかな?」
見返りを求めない愛の実在を証明してくれたひと。わたしの大切なただひとり。わたしはいつまでも彼とこうしてふたりでいたい。意外にも生活力のないあなたの日常をサポートするのも、面倒見のいいあなたにあれこれ世話を焼かれるのも好き。支え合う図式なら、ふたりで完成しているし、すでに完璧といっていいはず。
「どっちを選ぶにしても、このままじゃ俺も動けないから……ちょっとごめんね」
下からそっと抜け出た彼がわたしの身体を仰向けに転がすと、子宮いっぱいに注がれた白濁液もそれに合わせて動いた気がした。この中でいま起こっていることを考えると、興奮と不安が綯い交ぜになる。
それでも決してぶれなかったのは、他者の介入を許したくないという気持ち。たとえそれが彼とわたしの血を混ぜた子であろうと。
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