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HUNNY BUNNY
HUNNY BUNNY<XXIX>
しおりを挟む「んー……。だったら、もっと違う体位のほうがいいかなぁ。赤ちゃん欲しいんだもんね♡♡」
こくんと頷くと、唾を呑み込む音が左右の耳に響いた。緊張している自分に気付く。
「…………ねぇ。きみは? どうしたいとかどうしてほしいとかある? なんでも言ってよ♡」
大きな瞳がこちらへ向く。真剣に考えているのもただのポーズではないだろうけれど、それだけではない。他の目的があるはずだ。無邪気さを装った魔性に心を掻き乱される。
「ぁ……なんでもいいっ♡ どんな体位でも動いてなくても……繋がってるだけで気持ちいいから、このままぎゅーってしててくれてもいいよ♡♡」
「そう? まぁ俺も同じだけど♡♡ すごいよね、抱き合ってるだけなのに。きっと本当に相性がいいんだよ、俺たち……♡」
「ふふ♡ わたしたち、きっと最高の相性だね……♡♡」
絡んだ視線がキスを導くのなんて付き合いたてのカップルか新婚夫婦限定の現象だと思っていたけれど、わたしたちの場合はその限りではないらしい。慣れ親しんだ感触を確かめ合う。
「ね♡ でも、動いたほうがびゅーってしやすいし……下になってもらったほうが奥まで届けてあげられるんじゃないかなぁって思ったんだけど…………♡♡」
彼はわたしの願いを叶えるのを手伝うふりをして、彼自身の望む展開へと誘導しているのかもしれない。白雪姫のお妃が親切な魔女に化けて彼女を唆したように。わたしは再び試されている。勧められた林檎を食べるか、食べないか。
「……あ。いま、ぎゅってした♡ 素直だなぁ……♡ もう一回聞くね。本当になんでもいいのかな?♡」
「ううん。やっぱりなんでもよくなかった。わたしのこと、どこにも行けないように閉じ込めて……? 逃げられないように上から押さえつけられてイきたい……♡」
選択肢なんて初めからない。彼の望むこととわたしの願うことは一致しているのだから。差し出された林檎に歯を立てる代わりに、逞しい身体に抱き着いたまま、重心を後ろにかけていく。
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