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HUNNY BUNNY
HUNNY BUNNY<Ⅸ>
しおりを挟む「やっ……抜いちゃだめ…………」
「どうして? もうお腹いっぱいになっちゃったんでしょ? 俺のことはお構いなく。ほら、ぎゅーってしながら寝たいって言ってたよね。準備しようよ。……っていうかさ、足どけてくれないと抜けないんだけど」
決死の抵抗を口ではそう咎めるけれど、彼にとってはわたしを力尽くで引き離す程度、赤子の手をひねるようなものだろうに。急に別人のように冷たくなった態度に戸惑い、悲しみをおぼえる一方で、強硬手段に出ようとはしない彼のなかに捨てきれない優しさを見た。
けれど、当のわたしはそこではなく普段聞けないそっけない台詞に反応して、奥からは涙の代わりに蜜が滲出してきていた。いじめられて歓んでしまっているかのようだ。被虐趣味にも程があると自嘲する。
「お願い……。話、聞いて……?」
「…………いいけど、手短にね」
しぶしぶといった具合で承諾した顔はまだ険しい。そっけない返しに怯みつつ、慎重に言葉を選んで繋げていく。
「勘違いさせてごめんね……。もう寝たいって言いたかったわけじゃないの」
「ふぅん。そうなの?」
「うん。寝るのはいつになってもいい……。このまま終わっちゃうなんてやだよ、あなただってまだこんなに硬いのに」
そう言って、お腹に力を入れて締め上げたけれど、彼は眉ひとつ動かさない。
「あぁ、これ? 別に俺はあとで適当に一人でヌイてもいいんだけど」
「あなたがよくても、わたしはそんなの嫌。一人でなんて寂しいこと言わないで……。途中でついていけなくなっても、好きに使ってくれていいから…………」
とんでもないことを言い出した彼に思いとどまってほしくて泣きつくと、それまで真一文字に結ばれていた口角がわずかに上がった気がした。
「へぇ……。そんなに欲しい?」
「欲しい…………」
「正直で偉いね。でも、『欲しい』だけ言われても、なにが欲しいのかまではわからないなぁ。鈍い俺でもわかるように言ってみてよ」
嘘だ、と思った。彼ほど勘の良い人にはそうそう出会えるものではない。そもそも、わたしの欲しいものは何度も伝えてきたはずだ。でも、すでに痴態を晒してしまっている以上、いまさら恥じらったところで遅いし、ここは彼に機嫌を直してもらうためにも、おとなしく従うのが賢明だろう。
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