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ホーリーナイト・セレモニー
ホーリー・ナイト・セレモニー<Ⅵ>
しおりを挟む「……ぅ、ぐっ! すごくうねってるね……。持ってかれちゃいそう♡♡ ここも、きみに負けないくらい俺のことが大好きなのかな……♡」
「んっ♡♡ 頭のてっぺんから爪の先まで愛してる……ぁあ゛っっ♡♡」
いつからだろう。以前は意識にものぼらなかった空洞に頻繁に疼きをおぼえるようになったのは。一人でいるときの自分を生物として不完全な存在ではないかと疑い出したのも同時期だった。必ずしも『穴は塞ぐもの』と決まっているわけではない。耳の穴や身体中の毛穴がいい例だ。
しかし、ふとした瞬間に膣内は獲物を求めて蠢き、愛しきものの不在を思い知ってはひそやかに蜜を垂らす。ただひとりを誘き出すための甘い罠は、とめどなく流れる涙のよう。限界まで膨張した彼自身を埋められているときだけだ、空虚さが解消されるのは。
「俺もね、全部が柔らかくてあったかいきみのことが大好き♡♡ …………あ、またきゅうううってしてる♡♡」
「あなたもびくびくってしてる……♡ あんっ♡」
甘い囁きに唐突に気付かされる。ただ性器を埋めるだけではない。耳からも愛を吹き込んでくれる彼だから満たされるのだ。やり過ごしても押し寄せる波に耐えるわたしにいまできるのは、せいぜい腹筋に手をついて身体を支えることだけ。腕を巻き付ける代わりに膣を食い締めれば、彼が淫蕩に笑んだ。再び奥を揺すりながら、ふと気付いたように言葉を次ぐ。
「ところでさ、この突き当たりのとこ……。いつもはコリっとしてるというか、もっと硬い気がしてたけど……なんかふにふにして柔らかくなってるね? 気のせい?」
「ぁっ……♡♡ 柔らかい? ……たぶん気のせいじゃないよ♡」
子宮口は彼の到着を諸手を挙げて大歓迎、むちゅむちゅと熱烈にキスを繰り返している。わたしの唇だって、ここまで大胆に彼の唇へ吸い付けはしないだろう。めまいがするほど本能に忠実な我が身に開いた口が塞がらない。
「あ、そっか。そういうことだったんだね♡♡ キスされるの待ってるんだ♡ いまもそうだし、数え切れないくらいしてるのに、もっともっと欲しいってこと?♡♡」
直接的な言及を避けた曖昧な肯定を『キス待ち』と解釈したらしい。ど真ん中に正解というわけではないにせよ指摘するほどの間違いでもなく、どうしたものかと考えあぐねていると、彼の目元がさらに蕩けていく。
「……なんて言ってたら、きみのキス待ち顔思い出しちゃった♡ お口ちょっと開けて待ってるのがたまらなくてさぁ……♡♡」
「こう…………?」
果たしてわたしは言われたとおりの表情を作れているのだろうか。いまいち自信が持てないが、口笛を吹くときと同じ要領で軽く口を突き出した。空気が通る程度の小さな穴の確保も抜かりなく。
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