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ホーリーナイト・セレナーデ

ホーリー・ナイト・セレナーデ<Ⅹ>

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「嫌っていうか、その前にどれもあなたが絶対しないことだから、想像がつかないなぁ……。しかも、あなたにされることだったら、どんなことでも嫌なんて思わないよ? わたしは」

「ほんと? 『蝋燭垂らしたい』とか『おしっこかけてほしい』とか言い出しても付き合ってくれる?」

 並べられたのは、なんともマニアックなプレイ内容だった。どういう意図があっての質問なのだろう。そういった嗜好がある素振りを彼を見せたことはなかったと思うが、うっかりスルーしていた可能性もある。加えて、わたしに対してはとりわけ利他的な面の目立つ彼のことだ、巧妙に隠してきたのかもしれない。

 どきりともしたが、ぎょっとしそうにもなった自分の狭量さが憎かった。どんなにみっともない部分をさらけ出しても引かずに肯定してくれる彼との元々の人間性の差を痛感しつつも、正直な気持ちを繋げていく。
  
「…………蝋燭は怖いし、おしっこは恥ずかしいけど……あなたが本当にしたいなら、叶えたいと思うよ。わたしにできることだったら、なんでも付き合いたいし頑張りたい。じゃなくて……頑張る。飽きられるのが怖いって気持ちもかなりあるけど、一番の理由はあなたに満足してもらいたいから」

「極端な例で戸惑ったよね。試すみたいな真似して本当にごめん。でも、きみは俺相手ならなんでも許してくれるし、嫌がらないんだって確信持てた。ありがとう。あと……すっごいかわいかった。きみがかわいくない瞬間なんてないけどね! 『いじらしい』って言えばいいのかな? どっちも別に隠してた性癖でもなんでもないから大丈夫。俺がしたいこともしてほしいことも隠しておけないタイプだって、きみはよく知ってるでしょ?」

 ……ああ、まただ。ひとたび彼と目を合わせれば、胸の裡まで見透かされてしまっている気になる。美しい声が鼓膜を震わすときには、理屈よりも先行して感情に安心感を与えられてしまう。だから、わたしもあなたの抱く願望を実現させる手助けをしたいし、欲望もすべて受け止めたいと思えるの。

「うん、とってもよく。……でも、さっき例に挙げてたみたいな、ちょっと玄人さん向け? のことも……もし本当にしたくなったら、そのときはちゃんと教えてね?」

「ありがたい申し出だけど、安請け合いは感心しないなぁ。俺はきみと試してみたいことがたくさんあるんだよ?」

 と一旦身体を離した彼は、わたしを仰向けから横に転がし、背後に回る。挿入しやすいように臀部をそちらへ突き出し、上になっているほうの足を気持ち上げれば、頬に柔らかい感触。
 
「だ……大丈夫! びっくりはするかもしれないけど、わたしとだからしたいと思ってくれてるんだもん。なんでも言ってね?」

「そうするよ、ありがとう。だけど……特別なことなんてしなくても退屈はしてないし、俺がきみに飽きるなんてありえないってことも頭に入れておいてほしい」

 はっきり言い放たれた台詞も、吐息とともに再び重ねられたカラダも嬉しくて呆けていると、首の後ろに這わされた舌が隆椎から下っていく。擽ったさに細かく震えている胸に伸びてきた手は、乳腺を刺激するように周囲を擦る。
 
「きゃっ♡ ……ぁ、わたしも♡ 絶対冷めたりしないし、『飽きない』んじゃなくて『なにがあっても飽きられる気がしない』……♡♡」

「ありがと♡ まぁ飽きる暇なんてあげないしね?♡♡」 
 
 彼は人差し指と中指で乳頭を挟み込み、ふわふわと乳房を堪能しながら、小刻みな動きで的確に快感を叩き込んでくる。……にも拘らず、耳に直接届けられるのは、溺れるわたしをさらに沈める気満々で凶悪な猛攻を繰り広げている最中とは思えないほどの甘い甘い声。

「きみが相手だと、どんな話題でも盛り上がっちゃうね。いつまででも喋り続けられそうだけど、そろそろ次の質問に行ってもいいかな? トラウマを完全に乗り越えるために、ふたりでなにができそうか考えてる途中だったし」

「そうだったね。せっかくあなたから提案してくれたのに、半分くらい忘れちゃってた」

「あはは、やっぱり? でも仕方ないよね。してるんだから……♡♡」

 一瞬掠れた声がセクシーで、胸から下りてきた手の下にある内臓を意識せずにはいられない。そこにはすでに彼の精子が泳いでいるであろうことを。夥しい数のそれが数多の脱落者を出しながらも懸命にお目当ての卵子ものに向かっていく様子を。挿入が浅い分、いくぶん微弱で絶頂に追い立てられるほどではないと甘く見ていたことを反省せざるを得ない。どのような条件下でも、彼にとってはわたしを蕩かす程度、朝飯前なのかもしれない。
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